社会人経験が広げる、日本語教師の活躍の場

先日、「~は~をもたらします」の例文を学生に作らせたときのことです。

「外国人労働者の増加は何をもたらしますか?」

と質問すると、学生のひとりが

「外国人労働者の増加は日本経済の発展をもたらします」

と答えました。

「では、皆さんに感謝しないといけませんね」と笑って、次の項目へと進んでいきました。

専門学校生である彼らは、卒業後は日本で正社員として就職することを希望しています。
彼らの日本語はまだまだ不十分です。

実際、日本語不十分な彼らが正社員として就職できたとして、その先にどういった問題があるのでしょうか。

外国人労働者と雇用する企業に起こっている問題

2009年に、経済産業省中部経済産業局地域経済部産業人材政策課の監修でまとめられた「国際的な人材活用~外国人労働者受入ガイドブック~」から、いくつかの事例を挙げてみましょう。

 

日本語力不足と日本人側の誤解により生まれる問題

説明したことを理解していると思っていたが、まったく理解しておらず、大量の不良品が発生してしまった!

「わからないなら、わからないとはっきり言ってもらえれば、理解するまで説明したものを・・・」

後悔しても後の祭り。
会社にとって大きな損失となりました。

日本語力が不足していることを恥ずかしく思い、わからないと言い出せなかった心情は理解できます。

個人的感情よりも会社の責任、信用を大事にするべきとまで考えが育っていないことも想像できます。

また、外国人のその場限りの答えを簡単に信じてしまう会社側も安易です。

日本語教師をしていれば、彼らの気持ちや成熟度を理解し、その上で悪気のない嘘やごまかしを見破ることができます。

しかし、外国人に接する機会が特になかった日本人にとっては、言葉のままに信じてしまうでしょう。

 

確かな知識と技術を備えた人材であることを認識できず解雇してしまった!

非常にもったいないことです。
自分の知識や技術を発揮する日本語力があれば、会社もその外国人を十分に活用でき、お互いにとって非常によい結果をもたらすマッチングであったはずです。

しかし、日本語力の不足により貴重な機会を双方ともに逃してしまいました。

「外国人は出稼ぎで来ている」

といった日本人側の思い込みもあったのかもしれません。

 

特別なケアや説明の不足共に働く日本人の反発から生まれる問題

外国人労働者にライン作業だけやらせていたら、いい加減な仕事しかしなくなってしまった!

日本語を勉強し、異国の日本で努力している外国人に対しては、特別なケアが必要だと考えます。

日本人と同じ土俵にいる者として考えればまだまだ不十分な彼らですが、一個人として客観的にみれば、日本人以上に生活そのものが努力の連続です。

その努力が見合わなければ、簡単に別の仕事へ移る、仕事に手を抜くといったことに繋がっていきます。

彼らのやる気が出る報酬、密なコミュニケーション、仕事へのやりがいを持てる仕事内容を吟味することなどを通し、大切な人材であると感じてもらうことは重要です。

大きな金額が引かれる社会保険についても決して誤解がないよう、ことさら丁寧に説明する必要があります。

 

重用したい外国人がいたが、日本人からの大きな反発に遭い、断念!

日本人同士でも昇進に関する競争は激しいものですが、相手が外国人であればさらに厳しいものになることは想像できます。

「日本語もできない外国人に」といった言葉は常套句のように口に出ることでしょう。

外国人従業員に期待を持ち、重用していくつもりであると、本人だけではなく会社全体にも伝え、そういった空気感を当たり前としていくことは、残念ながらまだまだ遠いことのように思われます。

しかし、異国である日本での生活が窮屈で、やりがいのないものであれば、彼らは後々去っていきます。

これまで重要な働き手であった中国人やブラジル人が、自国の経済の発展と共に帰国していったのと同じように。

だからこそ雇用側も、彼らは単なる”出稼ぎ労働者”ではないと認識し、さまざまな配慮を見せていかなくてはいけません。

 

今、考えられている「日本語習得の方法」

先の資料(ガイドブック)によると、外国人従業員に日本語を身につけさせる方法として4つの方法が紹介されています。

それらの中で、現役日本語教師が関われそうなことを探ってみましょう。

自前型

場所は社内。講師も社内から調達します。
日本語教育のためだけに人を雇うことはしないでしょうから、ここに日本語教師の出番はありません。

自社開催型

場所は社内。講師は外部から手配します。
ここに講師として雇われるということはあり得ます。教材等も会社が手配します。

どの教材を使い、どう進めていくかは一任され、やりがいのある仕事になるでしょう。
会社でよく使われる語彙を入れるなどの工夫をするとよいと思います。

場所提供型

会社を学習場所として提供し、地域の団体から講師を派遣するスタイルです。
日本語教師のボランティアとして地域の団体に所属している場合は、こういった機会も考えられます。

学習インセンティブ型

会社が雇用している外国人に対し、日本語を習得することにより手当を支給するなどの経済的利益を与え、推奨する方法です。

会社側がどんなに日本語を勉強するよう勧めても、仕事をした上で勉強もというのは、日本人でもなかなか難しいことです。
手当などを支給してまで勉強させようとする会社であれば、外国人を長い目で育て重用していく方針という意味でしょう。

異国で自分の地位を確立していこうとする外国人従業員に講師として関わることは、非常にやりがいのあるものです。
また、日本語教師としての専門性を持つことに繋がるよい経験になります。

参照元:国際的な人材活用~外国人労働者受入ガイドブック~

 

まとめ

上記データからもわかるように、人口の減少と共に労働力となりうる年齢層の減少が明らかな日本にとって、外国人労働者の受け入れはもはや欠かせない状況になっています。
中小企業にとって、単純労働部分を補う人材ではなく、会社の発展に寄与する人材として期待していくことも、今後は当然の流れになるでしょう。

そのような彼らに日本語教師として、日本語だけではなく、ビジネスマナーも教えることができれば、さらに活躍の場は広がるでしょう。
日本語教師になる前に積み上げた社会人経験を生かせるチャンスでもあります。

日本語学校は依然として日本語教師不足で売り手市場ではあります。
社会人経験を積んだ上で日本語教師になった人には特に、ひと味違った活躍を期待したいものです。

参照元:内閣府

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