変化を遂げる日本語教育現場のリアル

たった5年ほど前の状況が遠い昔に思えるほどに、今の日本語教育の現場は様変わりしています。日本社会の変化を直接感じられる職場ともいえるかもしれません。

目に見える学生の変化

現場から感じられる変化を、学生に目を向けてご紹介します。

1:優秀な学生ほど就職希望に

昔は、優秀な学生の進路希望先は日本の大学もしくは大学院でした。いわゆる難関の大学に何人の学生を入れられるか、これがよい日本語学校の指標のひとつになっていました。

しかし今、現場では明らかにその頃とは違います。優秀な学生たちの進路が日本の大学や大学院ではなく、「就職」になっているのです。

「日本語学校って、もともとは日本の大学を目指す学生のための準備教育機関という立ち位置じゃなかった?」というつぶやきは、風にのって吹き消されてしまいそうです。

2:延々と学生を続けるのもアリ

「本当は就職したいがそこまでの日本語力はないから仕方なく進学」

こういった傾向は非漢字圏の学生に多く見られます。日本語能力試験でN3を取るのが精一杯といった学生であれば読めない漢字はまだまだ多く、流暢に話せる力も、正しく聞き取る力も不十分です。面接に挑戦してみるものの、日本語力不足を実感させられ、もっと勉強しなくてはと考えます。

しかし、日本語学校での在籍期間は最長2年ですから、別の進学先を考えなくてはいけません。

そこで次の進学先として挙げられるのが、専門学校です。ITなどの専門を身につける学校を選ぶこともあれば、引き続き日本語を勉強する日本語科を選ぶこともあります。

母国で大卒資格のない学生の場合は日本の大学を希望することもあります。よいか悪いかはさておき、日本語力が十分でなく大学の講義についていくことは難しいと思われるレベルの学生でも、受け入れる大学はいくつもあります。

3:アルバイトをせざるを得ない学生を容認

人手不足だから外国人を雇わざるを得ない。
ということは外国人が今後増えるだろう。
日本語学校はますます必要になるだろう。

そういった流れでできた日本語学校が数多くあります。順調に学生を増やしている学校はよいですが、そうでない日本語学校はまずは学生の確保ということで、募集条件を甘くせざるを得ません。

学校側は、経済面で余裕はないことを承知の上で入学させます。その結果、授業に集中して向かいたくても、生活費と学費を稼ぐためにアルバイトに精を出すしかない学生を多く受け入れることになります。

時給の高い夜勤のアルバイトをする学生は、とても授業に集中できる状態ではないでしょう。宿題をさせることもままならず、予習復習が十分でない学生の日本語力はなかなか上がりません。卒業時に十分な力がないまま卒業させることになります。

授業内容も徐々に変化

次は学生ではなく、授業に目を向けて変化をお伝えします。

1:既定路線から変化する今

学生の目的が変われば、授業も自然と変わっていきます。大学進学を目指す学生のための授業は、読解に力を入れていました。受験に合格するため、大学進学後の授業に欠かせない力だからです。

しかし、今は徐々に変わってきています。「読解よりもコミュニケーション、地道に力をつけるよりも学生の反応がよい授業へ。」そんな変化が見える学校もあります。

日本語学校に籍を置き、就職活動を見据えてアルバイトをする学生が求める授業は何か。生き残りをかけて、学校側も必死です。

2:専門性に特化した授業の登場

日本の人手不足が叫ばれ、はじめから就職希望の学生はもちろん増えていますが、中には業種までも絞って来日している学生もいます。介護、製造、建設などそれぞれの業種に特化した授業は今後増えていくのではないでしょうか。

実際、専門の資格が取れてこそ確実なビザの取得につながる介護などは、すでに特化した授業が始まっています。母体が介護施設といった日本語学校もすでにあります。目的がはっきりしている学生にとって最適の授業になることでしょう。

まとめ

このような変化を自然な流れとして受け止めつつ、学生の日本語力向上を図るために誠実な授業をする。日本語教師の仕事はこれに尽きます。

自分が教えたい授業、やり方ではなく、目の前の学生が求める授業をする。こういった柔軟性を必要とされるときが今なのだと思います。

それと同時に、学校という組織に属するのであれば方針に従うことも必要です。雇われている立場な限り、これは仕方がありません。

それが嫌になったときは、思い切って海外に挑戦してみてはいかがでしょうか?ここが日本語教師たる醍醐味なのですから。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう