現場から見た、変化していく日本語学校

日本語教師の勤め先として大きな受け皿である日本語学校。
そこには、1~2年後には大学、大学院などへの進学を目指す学生が、留学ビザを取得し入学してきます。
これが本来のビザ要件に合った形ですが、実際に来日し、日本語学校で学習する外国人にはさまざまな目的やニーズがあり、それに合わせて日本語学校も変化しています。

時間帯や期間の幅が広がっています

受け入れ人数が多い日本語学校は、さまざまな状況の学習者に対応するための努力をしています。
今や、午前と午後の二部制で授業をするだけでは不十分。
1~2年の日本語学習の後、上の学校で進学していく目的を持つ学生の受け入れだけでは不十分。
その結果、どのようなコースが新設されているのでしょうか。

1)夜間コース
夕方から始まる夜間コースの学生数は増加傾向にあります。
昼間はしっかり、夜は日本語学習と忙しくも充実した生活を望むワーキングホリデービザでの来日学習者もいれば、昼は日本の企業に正式に勤めている学習者(年齢的には働き盛りのミドルエイジ)もいます。
時間やお金を無駄にしたくないと考える大人度があり、非常に真面目に取り組んでいると聞きます。

2)短期コース
大半の学生は1~2年学習する正規コースに在籍しますが、上級クラスに上がるにつれ、短期コースの学生も少しずつ増えてきます。
自国で日本語教育をある程度の期間受け、JLPTのN2、N3はすでに合格したうえで来日した学生たちです。
正規の学生たちと同じクラスに1期だけ在籍することもあれば、ビジネスクラスを希望することもあります。
日本語学校側は、本人の日本語能力と希望に沿ったクラスを紹介します。

3)その他
コースとして開設はされていませんが、日本語学校が行なっている事業のひとつに教師の派遣があります。
専門学校や企業、高校への日本語教師の派遣、マンツーマンの授業を望む個人への日本語教師の紹介などです。

それぞれのニーズへ特化した取り組み

あくまで現場からの私見ですが、筆記試験である日本語能力検定(JLPT)合格を目指す授業から、コミュニケーション重視、よりニーズに合った授業、に変化しつつあるのを実感します。
変化の背景や実際の取り組みについてお伝えします。

コミュニケーション重視に変化した背景

海外に飛び出す日本語教師の増加によって、自国で十分な日本語教育を受けてから来日する優秀な学生が数多く誕生しました。
来日して初級や初中級クラスから少しずつ日本語を勉強していく学生だけではなく、来日後いきなり上級クラスに入り、授業をリードしていく存在になる学生も年々多くなっているのです。
彼らが日本での日本語学習に求めるものはなんといっても会話力です。
また、日本語能力試験の聴解テストレベル以上の聴き取り力を身につけたいとも考えています。
そのために来日したという声は数多く聞きましたし、そういった学生の文法や読解の力は十分すぎるほどに備わっていました。

コミュニケーション重視のカリキュラム

聴解レベルを上げる

    • 長い文章を聴き内容を問う質問に答える
    • 長い会話の核となる部分を正しく聞き取る
    • 全体を要約する
      など

上記のように、実際の場面で役に立つレベルの聴解問題に取り組む時間は以前より増えました。また、日本語でのニュースを聴き取る練習など、学生生活、社会生活の中で必要なことなどを中級クラスではなく上級クラスで実施することも増えてきました。
長い会話やニュースを聞く機会はあっても、実際に自分の聴き取りが合っているかの確認は難しいので、こういった勉強は概ね好評です。

会話レベルを上げる

上級クラスになれば、ただ延々と話すことは難しいことではなくなります。しかし、自分の意見を相手にわかりやすく伝えることはまだまだ十分ではありません。
内容だけでなく話し方のスタイルを含め、日本社会になじみやすい話の進め方などを知る必要もあります。
そういった目的に達するため、グループタスクやスピーチ、ディベートなどさまざまな方法をカリキュラムに取り入れています。
日本語教師の関わり方はまだまだ研究の余地がありますが、日本語を使って自国でしていたことができるというのは、本人にとって非常によい経験にも自信にもなるでしょう。

留学試験(EJU)対策の実施

超難関といわれる日本の大学への進学を目指す優秀な学生は、日本語能力検定に合格することを重要視しないことがあります。
「就職希望であれば参考にされるので合格しておいた方がいいかもしれないが、日本語能力検定合格は進学にはあまり関係ない」
という認識に変わってきています。

実際に公開されている入学試験要項によると、日本語力は面接や小論文などで問われますが、日本語能力試験に合格しているかどうかは問わないとはっきりと示されています。
(参考:日本学生支援機構の学校検索資料

その代わりに多くの大学が試験要項に入れているのは留学試験(EJU)です。
科目は、日本語・理科・総合・数学です。
留学試験対策のために、日本語教師とは別の専門の講師を雇い、塾を開講する日本語学校もあります。

まとめ

日本語学校は年々増加していますが、それと同時に淘汰されていくともささやかれています。
世界の中での日本語教育熱の変化、日本社会が外国人に求めるものなどを正しくつかみ、必要な日本語教育の形を常に探っていくことは大切です。
学費をいただく以上、学生のニーズに沿ったカリキュラムを研究し続け、学習しやすい時間帯やコースを用意し、目に見える形としてアピールすることも重要でしょう。
日本語教師側もこういった変化を多少なりとも知り、自分の教える技術のどこを高めていけばよいのかを知ることは大切なことだろうと思います。
コミュニケーション力があってこその日本語教師ですが、ますますその力は問われていきます。

 

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