日本語教師の模擬授業で教案作り、困りました!

「日本語教育能力検定試験の合格、おめでとうございます。」「日本語教師養成講座420時間の修了、お疲れさまでした。」

日本語教師になるための資格を得た方が次に行うのが就職活動ですね。求人先に電話をかけ、面接希望を申し出ます。そのときに言われる言葉、「面接の際、模擬授業も行いますのでご準備願います」。ドキ~ン!心臓が止まりそうになりますね。3~4人の面接官の前で模擬授業を見せることが多いです。私のときは専任の先生方4人でした。やりにくいことこの上なしです。それでもここを通らなければ採用はない。やるしかありません。

今回は、模擬授業の中でも教案作りについてご説明します。

模擬授業で教案作りをするとよい理由

教案提出は必ず求められるわけではありませんが、作っておいた方がよいでしょう。実際の授業になると、毎回教案を作っている先生もいらっしゃいます。教案作りは、慣れるまでは実際の授業時間の何倍もの時間を要しますから、毎回作成というのはなかなか大変というのが正直なところです。かくいう私もしていません。でも作成していた時期もありましたよ。それは初級を教えていたときです。

なぜ初級のときは、教案作りが重要なのか。理由は2つ挙げられます。

【理由1】語彙コントロールされた説明や例文は、その場ですぐに出ないことがあるから

初級は、文法事項そのものは簡単ですが、確実に教え、練習し、覚えてもらう必要があります。それってレベルに関わらず当たり前じゃないの?と思われるかもしれませんが、内容は若干違います。初級の学生ですから難しい言葉を使うわけにもいかず、厳しい語彙コントロールが必要です。学生の理解できる語彙だけで例文を出し、練習するのは、ぶっつけ本番では失敗しやすいものです。

【理由2】初級の学生の文型練習は、段階をふんで丁寧にする必要があるから

たとえば「私は、〇〇(名前)です。」「〇〇さんです/〇〇先生です。」を教える場合を考えてみましょう。これらの文型を教えるのにどのくらいの段階を踏む必要があるのでしょうか。

一例です。自分の胸あたりに手を置いて「〇〇です」次に「私は〇〇です」このとき学生はただ同じことを繰り返しつぶやきます。〇〇を自分の名前には変えません。こちらは、このときはただ聞き流します。次に学生に向かって紹介するように手のひらを返し、「〇〇さんです」そして学生に言わせてみます。「〇〇さんです」ここで首を横に振り、「〇〇です」と言い直させます。繰り返して言えるようになったら次に「私は〇〇です」とさらに言い直させます。

ここまでで学生はたくさんのことを学習します。自分のことを言うときに「~さん」はつかないこと。「私は、」をつけること。他の人のときには「~さん」がつくこと。その理解をひとりひとりに確認させるために、同じ練習を他の学生にも行います。ひとりずつ一連の流れをすべて行うか、ひとつの項目ずつ順に行うかは、カリキュラムの時間の都合と学生のレベル、人数によります。

ここまででも、細かい段階を踏んで、学生に考えさせて理解できるようにしているのがわかります。考えないでも日本語が口から出てくる上級と違い、初級の学生は、単語ひとつ、音ひとつ口にするだけでも必死です。こういったひとつひとつの段階をうっかり飛ばしてしまうと、彼らはパニックになり、おうむ返しに繰り返すだけになってしまいます。当然理解が浅いものになり、よくわからなかったで終わる、または間違ったものになる可能性は非常に大きくなります。

初級は、とりわけ教案作りが必要不可欠です。ましてや模擬授業時には教師としての経験も浅いので、ついついあせってしまい、踏むべき段階を飛ばしてしまう可能性が高いです。おまけに生徒役の先生は、わざと間違えることもします。臨機応変に対応できるかを見るためですが、その都度頭が真っ白になりかけます。模擬授業のための教案作り、これは必ずしていきましょう。

実際の教案作りはどこまでするか

採用試験にて模擬授業をする時間は20~25分程度というところが多いようです。この時間であれば、導入と文型の練習そして、文法の説明といったところでしょうか。

直接法の初級の場合、文法の説明は理解されない場合も多々ありますが、今後の授業パターンとして学生側にわかってもらうため、するべきだと思います。語彙コントロールされたわかりやすい説明文を作成してください。

教案に書くことと実践内容

<導入:5分>
使う道具を含めた内容とその中で学生に伝えたいことを教案に書きます。

導入は教師の個性の見せどころです。学生をわくわくさせ、できれば日本文化を紹介できるもので、その日の学習項目につながるものを考えましょう。楽しそうにするのが何より大切です。

一例としては、アンパンマンとバイキンマンに登場いただくのはどうでしょう。なるべく皆が知っているものにしましょう。「アンパンマン」「バイキンマン」「アンパンマンさん」「バイキンマンさん」相手を呼ぶときには「さん」をつける程度までしてもよいでしょう。

<文型練習:15分>
教案には文型を書き、例文を書き、練習方法も書き入れます。

内容は上記に書いた通りです。自分を使い、次に学生を使い、さんをつける場合とつけない場合を設定し、考えさせ、理解してもらいます。学生の言い間違いについては、丁寧に言い直します。ここは笑顔と共にゆっくりと訂正します。

<文法説明:2分>
初級の学生への説明ですから短いものです。全文書いてもいいですね。これが書かれていると面接者は安心できます。そこの課で教えるべき項目がきちんとつかめているか確認できるからです。教師が勘違いしていてはどうしようもないですからね。

ゆっくりと言葉ひとつひとつをクリアに発音しながら、説明します。何度も繰り返す必要はありません。質問があった場合は(意地悪ですねぇ)それに答え、もう一度繰り返すことになりますが。

まとめ

模擬授業は、教案の出来・不出来よりも、授業が止まってしまうことのないよう進められるかが大切です。

それともうひとつは、45分なり90分なりの時間をきちんと組み立てられるかを見ます。導入、文型練習、文法説明の時間配分、それぞれの区切りのつけ方が学生にとってわかりやすければよいのです。
ダメ出しをされても合格できた、ということはよく耳にします。笑顔を絶やさず、冷静さを装っていれば、よほどのことがない限りは大丈夫だと思いますよ

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