専門学校と日本語学校、やりがいはどちらにある?

縁があって、専門学校の留学生に日本語を教える機会を得ました。日本語学校だけで教えていただけではわからなかったこと、気が付かなかったことがたくさんあります。日本にいる日本語教師ならではの守備範囲の広さを実感したともいえます。

専門学校と日本語学校の違い

実際に見て、日本語学校とはここが違うと感じた点をいくつか挙げます。

専門性を身につけさせるためのカリキュラム

私の知る専門学校は日本語科ではなく、日本語も習うが別の専門科目もあるという科です。日本語にかける時間は学年が進むごとに減っていきます。1年のときには半分以上を占めていた日本語授業が3年のときには3分の1もありません。卒業時にはそこで培った専門知識を武器に就職へと進む学生が多いです。

そのためには専門学校での日々の授業を大切にしてほしいのですが、残念ながら先生の説明がしっかり伝わらず、十分に身につけることができないまま、専門性の修得が中途半端に終わる学生もいます。

非漢字圏の学生が多い

希望した大学に入れなかったためにここに来たという学生も、少なからずいます。
非漢字圏の学生はどうしても漢字そのものを意味から掴むまでに時間を要しますから、日本語学校の期間だけでは足りないということでしょう。

日本語学校から専門学校へと、延々と学生をするだけのお金と時間がもったいないという人であれば、漢字だけでも自国でしっかり勉強してくるのが得策だろうと思います。

生活費と学費を稼ぎながら毎日学校に通う生活が何年も続くと、疲れ切ってしまう、流されてしまうということもあり得ますから。

資格試験にたくさんチャレンジさせる

これは留学生に限ったことではなくどの専門学校も同じだと思いますが、会社へのアピールのために資格試験は積極的に受けさせます。日本語力やまじめな努力の証明になるからです。

学生たちもそれは理解しているのですが、問題文の日本語が理解しきれない状態で受けてもお金の無駄と思い、初めから諦める学生もいます。

専門学校に勤めてよかった!

どこの職場もいいところがあれば、大変なところもあるでしょう。
私に限っていえば、よかったと思える点がいくつかありましたのでご紹介します。

多彩な先生たちから刺激を受ける

最近は専門学校も単科ではなく、さまざまな科が用意されています。それに合わせて専門性を持った先生方と出会うことができます。

先生方の年齢も日本語学校と比べると高めで、教えることそのものの経験年数が長く、落ち着いています。

また専門性を持った先生方はその世界独特の空気を身につけているので、学校全体が日本語学校とは違った、社会に直結する広い世界に向かっているように感じます。

卒業生のその後の姿が垣間見れる

十分な日本語力を身につけることができず日本語学校を卒業していった学生たちが、その後どうなっていったか気になっていました。

日本語の勉強は引き続きできているのだろうか。

まじめな授業態度は継続できているのだろうか。

専門学校の後の進路はどうするつもりなのか。

もちろん一人ひとり結果は違います。

専門学校からの紹介でインターンシップに参加し、就職へと順調に進む学生。
1年を自分なりの区切りとし日本語の勉強をさらに進めて希望の大学へ進んでいく学生。

いずれも着実に前へ進んでいると知り、ほっとしました。

でも中には相変わらずの学生もいます。
勉強とは違った方向にしっかり舵を切ってしまった学生もいて、それもまた本人の選択なのかと思い、眺めています。

長くかかってもN1に到達できることを確認できる

日本語学校で漢字に苦労していた学生たちは、専門学校でも漢字に対して諦めモード。いくら勉強しても追いつかないという思いがあるようです。

それでもN1やN2に合格する学生は多くいます。時間をかければ合格できるということです。

日本語も上達しないまま単に生活していくだけになってしまうのではと心配な学生も、数年後には変わっていくのだと期待でき、安心します。

日本語を教えるときに求められるものが若干違う

やりがいという点では、どちらがどうということは言えません。どちらに勤めても日本語を教えることには変わりないのですから。
ただ読解授業に関しては特に違いを感じています。

まるで国語の授業のような日本語学校の上級クラス

日本語学校でN1を目指す学生は漢字圏の学生がほとんどです。彼らは漢字の意味を拾い、長文の中味がわかるので読解授業を軽くみて、思い込みによる間違いもありがちです。

ですから細かい言葉の言い回しやニュアンスなどまで教えて説明しなければいけない大変さがあります。まるで国語の授業のようだと感じるほどです。

知識とその伝え方を要求されるやりがいと大変さが同居しています。

飽きさせない授業への工夫がいる専門学校

専門学校でN1を目指す学生は非漢字圏であることが多いです。文法や聴解などは十分勉強してきており、仕事を通しての会話力もあります。

しかし知らない漢字がまだまだあるため、読解があまりに弱いのです。読解については本人たちも大変だからしたくないと言っていますが、同時に必要性もひしひしと感じています。

そんな学生たちに読解を「叩き込む」、「教え込む」。この技術が必要です。

砕いて教える、大まかに掴んで正解を得る練習をする。手を変え品を変え、飽きさせないよう、読解で得点が取れるようにする力が必要です。
日本語への知識もさることながら、教え方のバリエーションが試されると感じています。

まとめ

専門学校の先生に言われました。「日本語学校でちゃんと日本語を身につけてきてほしい、と学生に言いたいです」と。

“専門性の勉強、そして就職という進路を考えると、日本語だけに集中できる日本語学校で精一杯勉強してきてほしい。それをするところが日本語学校である。”

と言いたいのでしょう。

「出身国によってはまだまだ幼さが残る学生もいて、よい生活習慣や当たり前の学習態度を身につけさせるしつけ的なことから始め、十分成長させて送り出しているのですよ」
と言いたいところですが、専門学校側からすれば、まだまだ不十分なようです。
日本語学校を卒業した後にもさらなる成長が求められています。

一人ひとりに真剣に向き合い、日本での生活が意味のあるものになるよう、さまざまな点でサポートする。
専門学校にも勤めることによって、日本語教師は単なる語学教師だけにはとどまれない仕事だと改めて実感しました。

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