日本語学校の学生はさまざまな国から来ています。年齢的には十分大人とはいえ、クラス全体で統一したルールを決めて徹底させる必要があります。
中にはまるで小学1年生に向かって言うようなものもあり、初めて教壇に立つ日本語教師には違和感があるかもしれません。
クラスルールの一部を紹介
複数の学校を見て、共通しているルールをいくつかご紹介します。ルールには、マナーや筆記用具、授業をスムーズに進めるためのものがあります。
マナーについて
- 授業中は食べないこと(ガムやキャンディーも不可)
- 教室に入ったら帽子をとること
飲食や帽子についてのルールは、それぞれの国により習慣の違いがあります。日本の学校での当たり前のルールとして統一させるために、細かいようですがきちんと伝えます。
「伝えられていなかった=自由にしてよい」と判断してしまう学生もいます。また先生により判断にもブレがあるため、きちんと一つひとつはっきりさせておく必要があります。
筆記用具について
- シャープペンシル、もしくは鉛筆を使う
- 消しゴムを使う
漢字の間違いなどをきちんと直すことを考え、筆記用具もシャープペンシルや鉛筆に限ることが多いようです。ボールペンのみを使う国もあり、消しゴムは用意していなかったということもよくあります。このあたりは事前のオリエンテーションで、ときには通訳を介して細かく説明します。
また初日に先生から伝えられても、しばらくは徹底されません。ボールペンで書いていたり、消しゴムを使わず二重線で消して直していたりします。そのたびに面倒と思わず注意する必要があります。
授業をスムーズに進めるために
- 遅刻して教室に入るときには「すみません」とひとこと言うこと
- 教科書を忘れたときには、クラスメイトの教科書を事前にコピーしておくこと
- 授業中はスマホ(スマートフォン)を使わない 、ただし作文授業など先生からの許可があれば使ってもよい
- トイレは休憩時間に済ませ、やむを得ない場合を除き、授業中に退室しないこと
この中で特に「スマホの使用」についてはどの学校でも迷うところであり、上級クラスに限っては使用を認めるという場合もあります。
スマホを辞書の代わりにのみ使うのならよいですが、つい連絡の確認をしてしまったり、ひどい場合はゲームをしたりといったこともよくあります。やむを得ず完全に禁止にしたという学校が多いようです。
中には授業前に回収し、授業後に返すといった学校もあります。
トイレについては厳しすぎるようです。家族からの電話、アルバイト先からの電話などを気にしながら授業を受けることを防ぐ意味で、トイレと称して退室しスマホをチェックしてくることがないようにルール化しています。
クラスルールを徹底させることの意味
どうしてこんなに細かいのでしょうか。当初は疑問に思いました。
年齢的に大人である学生に厳しすぎるのではないか?
真面目すぎるのではないか?
日本は窮屈だと思われるのではないか?と。
しかし、何年か経つうちに、そうする必要性がわかってきました。
馴れ合いから起こるテストの不正を防ぐ
日本語の到達度を測るテストは、正しく本人の力を測らなければいけません。
しかし、残念ながら不正が起こることがあります。隣の人の答案を覗くこと、机の上に漢字などを書いておくことなどです。「カンニングをすればテストは0点にします!」と伝えているにも関わらず、起きてしまいます。
こういったことがまかり通らないよう、日頃から厳しくしておき、馴れ合いは許されないのだと認識してもらう必要があります。
日常生活の基本になるクラスルール
さまざまな国から来ていろいろな考え方をする学生たちに、日本のスタンダードな考え方を伝えるという意味で大切です。来日当初は学校の生活が彼らのほとんどを占め、学校で習ったことから考えを深め、日常生活に応用していきます。飲食について、マナーについて、スマホ使用についてなどの基準から、日本のやり方や基準を学ぶことでしょう。
遅刻したとき、何はともあれ「すみません」ということは、いかにも日本らしいことだと考えます。サラリとできることは必要でしょう。
まとめ
クラスルールについては学校によって若干の違いがあります。学生の年齢や勉強に向かう姿勢によってはさらに厳しく、細かくする場合もあるでしょう。逆に厳しすぎると文句を言われることもあるでしょう。
けれど、横柄で勝手な態度より、謙虚で礼儀正しい態度であった方が、周りにも受け入れられやすいのではと考えます。
異国に暮らす学生のための親心といったところでしょうか。