「最近、コンビニで働く外国人って多くない?」
「ファミレスとかは募集してもなかなか人が来ないらしいよ」
「介護はいつも人手不足だしねぇ」
「外国人にも働いてもらわないとまわっていかなくなるのかな」
近年、こんな会話は当たり前に交わされるようになりました。
また、日本語学校は過去5年間で200校以上も増え、2018年4月時点では国内に680校ほどにまでなりました。
つまり留学生もかなり増えているということです。この背景には何があるのでしょうか。
目次
日本語学校の留学生の増加=留学生の増加
下に示した日本学生支援機構の資料を見ると、留学生は平成25年を皮切りに急激に増加しています。
その著しい変化の理由は何なのでしょうか。
就学生が留学生としてカウントされるようになった
グラフ下部の但し書きにもあるように、平成22年7月に「留学」と「就学」が一本化され、それまでは就学生としてグラフに計上されていなかった日本語学校の生徒が、平成23年5月からは留学生として計上されるようになりました。
これが日本語教育機関、つまり日本語学校のグラフの急上昇の理由でしょう。
専修学校の学生も数年遅れで伸びている
日本語教育機関の留学生の伸びから数年遅れで、専修学校の留学生の伸びていることも目をひきます。日本語教育機関の伸びと同じような角度を描いています。
これは日本語学校の留学生が卒業後、専修学校に移行していった結果ではないでしょうか。
留学生も立派な外国人労働者
厚生労働省の資料によると、平成24年から平成28年の間に外国人労働者の数は確実に増えています。
総数としては、平成24年が約68万人でしたが、その後着実に増加し、平成28年には108万人もの外国人が日本で仕事をしています。
外国人労働者としての留学生の数は?
資格外活動(就労)をする留学生の数を、平成24年から順に拾ってみましょう。
平成24年は約11万人、平成25年は約12万人、平成26年は約15万人、平成27年は約19万人、平成28年は約24万人まで伸びています。
つまり留学生の資格を持ち、資格外活動許可を得て外国人労働者として働く留学生は、この4年の間に2倍以上にも増えているのです。
外国人労働者数に占める留学生の割合は?
資格外活動として労働している留学生の数の、外国人労働者全体の数に占める割合を計算してみました。すると非常に興味深い数字が出たのです。
平成24年から順に数字を挙げていくと平成24年は約16%で、そこから17、19、21と上がり、平成28年には実に約22%も占めています。全外国人労働者の1/4を占めつつあるという結果になっています。
もちろん週あたり28時間以内という制限があるので労働量からすれば多くはありませんが、労働の一端を担っている存在といえるでしょう。
実際の数字だけではなく、全体の中で外国人労働者が占める割合も徐々に増えています。
永住者や専門的・技術分野で働く外国人も同じように増えている中でさらに割合を伸ばしているというのは、それだけ外国人労働者としての留学生の増加が急激であることがわかります。
留学生が就く仕事は何か?
もうひとつ厚生労働省から興味深い資料をご紹介します。産業別外国人労働者数です。
- 建設業
- 製造業
- 情報通信業
- 卸売・小売業
- 宿泊サービス・飲食サービス業
- 教育・学習支援業
- その他
上記に分けて数字が出ています。
こちらは平成29年の資料ですので、資格外活動をする留学生の数は、平成28年の約24万人から約30万人にまで増えています。
全外国人労働者数に占める割合は23%。予想通り増加していました。
留学生が就く仕事として圧倒的に多いのは、5.宿泊サービス・飲食サービス業です。
留学生約30万人のうちの10万人、つまり1/3ほどの留学生がこの業種でアルバイトをしています。
ホテルのフロントや清掃業務、レストランの厨房やウェイトレス業務についている学生たちの姿が目に浮かびました。
次に多いのは、4.卸売・小売業です。免税店やドラッグストア、コンビニで働く学生たちの姿が思い出されます。こちらは約6万人。1/5ほどの留学生です。
期待される留学生の存在
以上、留学生に関するいろいろな資料から数字を拾い、留学生をとりまく状況について明らかにしようと試みました。
その結果から、私なりの考察を示したいと思います。
発展、成長産業に対して人手が追いつかない
テレビをつければグルメ番組の昨今。新しくできたレストランやカフェなどの紹介に余念がありません。
ホテルも次々と建設中です。24時間営業したくさんのお客様をお迎えするホテルは、人手がいくらあっても足りません。
2020年のオリンピックに向けてということもあるでしょう。
発展、成長する産業に対しての人手が圧倒的に不足しているのではないでしょうか。
日本人の若者の労働力は確かに減っている
同じく厚生労働省からのグラフによると、日本人の15~29歳の若い労働力は、確かに減少しています。
2000年と2017年を比べれば、約1600万人から1200万人に推移しています。なんと400万人の減少です。
中高年の人数は大きな変化がないので、少子化の影響がはっきり出ているといえるでしょう。
この減少を補うかのように、実際の社会では変化が起きています。
以前は若者だけだった職場に中年といわれる人たちが進出しています。
ファストフード店で働く中高年齢者を見かけることは、今や珍しくありません。
しかし仕事によってはスピードや体力が重視されます。
頭の回転も速くスピーディーに動け、毎日働ける体力もある若い留学生が、とても重宝がられるのです。
まとめ
日本側のニーズと本人たちの希望とが合致した結果、資格外活動許可を得て、人手が不足している業種に就く留学生の姿が見えました。
増加する日本語学校ということに戻って考えてみると、大学よりも入りやすく、授業も半日なのでアルバイトもしやすいです。
その敷居の低さに魅力を感じ、日本語学校に入学する学生は増加しているのではないでしょうか。
卒業後、彼らはどうするのでしょう。
厚生労働省の資料では、進学希望者よりも就職希望者の割合が多くなっています。
そして平成27年の調査では、4万人の卒業留学生のうちの30%にあたる1.2万人が見事就職を果たしています。こうしてまた外国人労働者の割合は上がっていくのでしょう。
つまり日本語学校は、いまや「大学や大学院進学を目指すための日本語力をつける学校」ではなく、「不足する労働力を補う外国人労働者の日本語力を上げるための学校」になりつつあるといえるのではないでしょうか。