公教育の場で日本語を教える

学校や会社で外国人に出会う機会は随分増えてきました。地域によっては多すぎるほどに外国人を目にします。家族単位で定住すれば、外国人児童も日本の公教育を受けることになります。日本語はどの程度使えるのだろう、授業についていけているのかと考えずにはいられません。

日本に住む外国人児童の日本語事情についてご紹介します。

公立学校に在籍する外国人児童数

文部科学省のデータによると、公立学校に在籍している外国人児童数に、ここ10年間で大きな変化は見られません。平成16年度が約7万人、平成21年度が約7.5万人、平成27年度が約7.6万人です。

その内訳はおおまかにいえば、小学生が4.5万人、中学生が2.1万人、高校生が8千人ほどです。圧倒的に小学生が多くなっています。日本語教育的に考えると、学習の基礎を作る小学校の時期にきちんと勉強ができているのか非常に気になります。

日本語指導が必要な児童生徒数

在籍児童数からさらに日本語指導が必要な人数は、約4割にあたる3万人になります。平成16年度の約2万人の状況から比べると明らかに増加しています。在籍数はあまり変わらないのに日本語指導が必要な人数が増えているということは、それだけ滞在期間が長期化しているということでしょうか。

もうひとつ興味深いデータがあります。それは日本国籍でありながら日本語指導が必要な児童生徒が増加しているということです

参照元:

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/06/__icsFiles/afieldfile/2016/06/28/1373387_03.pdf

日本国籍なのに日本語が話せない?一見、不思議なようですがあり得ることです。日本語学校にも、親が日本人で日本国籍だが、育った国が外国のため日本語が不十分という学生がいました。

もうひとつの理由も考えられます。日本国籍児童生徒の使用頻度の高い言語は何かというグラフでは、フィリピン語が約25%を占め、中国語も約20%を占めています。考えられる理由としては、国際結婚で生まれた子どもが日本国籍を持ちながら、主に外国人の母の言葉で育ち、日本語を身につける機会が少なかったということが想像されます。

文科省の方針と支援施策

文科省からの参考資料の中で「外国人がその保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には、無償で受け入れており、教科書の無償配布や就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障している」と書かれています。

下記のような支援施策も充実しています。

  • 外国人児童生徒に対する日本語指導を行う教員を配置
  • 帰国・外国人児童生徒等教育推進支援事業
  • 日本語指導者に対する研修の実施
  • 就学ガイドブックの作成・配布
  • 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成、実施
  • 外国人児童生徒の総合的な学習支援事業

この中で特に注目したいのが「特別の教育課程」についてです。『教員を配置すること』『日本語指導者に対する研修を実施すること』『ガイドブックを作成すること』もよいですが、実際に確立された教育課程の下で授業時数が確保されないと、効果を挙げることは難しいと考えるからです。

特別の教育課程

「特別の教育課程」の概要から実際に教わる場面がイメージできる部分を抜粋してみましょう。

  1. 指導者:日本語指導担当教員(教員免許を有する教員)及び指導補助者
  2. 授業時数:年間10単位から280単位までが標準
  3. 指導の形態及び場所:児童生徒の在籍する学校における「取り出し」授業

授業時数にかなりの幅があるため、まだまだ確立されていない試験段階なのではと感じられます。

特別な教育課程でなくても何らかの日本語指導を受けている児童生徒の割合は80%を超えています。が、その中で「特別の教育課程」による日本語指導を受けている者の割合は、外国人児童生徒については小学校で26.7%、中学校で22.9%です。日本国籍の児童生徒については小学校で20.9%、中学校で18.9%です。

必要とされる学校の8割がまだきちんと対応できていません。「特別の教育課程」実施のために必要な取り組みとして挙げられているのは「体制整備」が80%を占めていますから、残念ながらまだ体制自体が整っていない自治体が多いということでしょう。

公教育の場で日本語を教える機会は増えるか

平成27年末現在で、在留外国人数は約223万人です。平成26年末と比べて約11万人増加しています。これは日本全体の人口の1.86人を占める数字とのことです。

日本人の少子化、そして若い世代の人口減が進む中、外国人は貴重な働き手として期待されています。技能研修生の受け入れ、介護や看護の現場での外国人受け入れ等、国を挙げての事業としての施策が実施されています。

またビジネスのグローバル化が進み、外国語ができる日本人よりも日本語ができる優秀な外国人を雇う企業も出てきています。今後は生活者として日本に滞在する外国人は増加していくのではないでしょうか。

そこで気になるのは、保護されるべき子どもの存在です。日本の公教育を受けることを望んだ場合、日本語を教わる授業が「特別の教育課程」の下、確実に実施されていれば、親も安心して働くことができます。また将来の貴重な働き手にもなっていきます。

まとめ

実際の教育現場の声からも、日本の教育から取り残されている外国人児童は多いと耳にします。ボランティアでそういった児童に日本語を教えている団体は数多くありますが、日本語の量もレベルも不十分なまま子どもはあっという間に成長していきます。

日本で生まれ育つ日本語が十分でない外国人の子どもたち、外国で育ったとはいえ日本にルーツを持ち日本語力の不十分なことに複雑な思いを抱えているに日本国籍の子どもたち。そのどちらにも特別な施策が十分に施され、本来の力を発揮していけるように、今後、進んでいくことを望みます。と同時に、そのために日本語教師ができることは何なのかを考えています。

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