欧米の日本語学習者の実態と今後の予測

日本語教師として日本で仕事をし、後々は海外で働きたい。ニーズの高さを考えるとアジア諸国がいいのかな、でもできれば欧米諸国にも一度は行ってみたい…と考えている方も多いと思います。便利な日本とあまり変わらないところにまずは行きたいと考えるのは当然でしょう。
日本語教師として仕事をしていくのであれば、仕事をする対象がいなければニーズがありません。つまり日本語学習者がいなければ仕事としても成り立たないでしょう。

ここでは、特に欧米の日本語学習者に焦点をあて、欧米の人たちに日本語を教える機会は今後増えていくのかどうかについてお伝えします。

欧米の学習者自体は全体から見れば多くない

まずは欧米の日本語学習者はどれくらいいるのか、ニーズは十分にあるのかについて、世界全体からみていきましょう。

欧米は順位的には意外と健闘している?

下の表をみると、20位までの国のうち、欧米の国々は6カ国、大洋州の国々が2カ国、残りの12カ国はアジア諸国です。欧米の国々も意外と多いですね。
しかし実際の学習者の数に注目すると、1位の中国から7位の米国までは10万人台ですが、8位以下はぐっと減り、20位のシンガポールは1万人強というところで、あと少し減れば千人台になります。
順位では健闘していても、実際の人数では上位の中国、インドネシア、オーストラリア、韓国、台湾の数字は桁が違いで、断然多いのです。

(参考資料:国際交流基金

東アジアと東南アジアだけで全体の80%弱!

国際交流基金から発表されている数字を使い、日本語学習者数に対する各地域の割合を計算してみました。2015年の日本語学習者数を基準に計算しています。
世界全体の日本語学習者3,627,268人に対する各地域の人数とその割合を挙げます。

  • 西欧:83,559人 2.3%
  • 北米:190,599人 5.3%

全体からの割合では、いずれもかなり少ない数字になりました。

参考までに東アジアと東南アジアの数字も挙げます。

  • 東アジア:1,763,420人 48.6%
  • 東南アジア:1,094,437人 30.2%

もともとの人口の違いももちろんありますが、日本語学習者については東アジアと東南アジアだけで全体の80%弱を占めています。

増えている国もあれば減っている国もある

世界全体の数字からすれば欧米でのニーズは決して高いといえませんが、数字としては西欧が83,559人、北米が190,599人います。
特に米国では地域によっては日本語教師が不足しており、最近では日本語教師の派遣に力を入れています。

増減の理由を探るために、学習者が増えている国として英国と米国減っている国としてカナダとドイツを挙げ、詳しくみていきましょう。

米国

初等、中等、高等と各段階の教育の中で、外国語の選択肢のひとつとして日本語が取り入れられているのが、まず人数として多い理由です。民間で学ぶ学習者は6.2%にしかすぎません。
1980年以降の日系企業の進出に伴い、日本語がビジネスチャンスや雇用の機会を増やす手段として注目されました。しかし、バブル崩壊以降は関心が薄れたといわれています。それでも今なお興味を引く理由は、アニメやゲームなどの日本のサブカルチャーの若年層への人気の高さにあります。またもうひとつ興味深い理由として、米国へ留学している中国や韓国からの学生が外国語選択として日本語を学習するということもあります。

しかし全体的な流れとして、日本語学習は厳しい状況があります。
ひとつは米国自体の経済の低迷により外国語教育への予算は削られる傾向にあること。その中で国際的な人材育成のために外国語教育を要望する声はあっても、その対象言語は中国語、そして安全保障上の理由からアラビア語などになる現実があり、日本語が選ばれる機会は減っていることがあります。

英国

米国と同じく、初等、中等、高等と各段階の教育の中で、外国語の選択肢のひとつとして日本語が取り入れられていますが、民間で学ぶ学習者の割合も少なくはなく14.4%を占めています。
これは、英国では生涯教育という考え方のもとで成人教育機関が充実していること、また、ネイティブの日本語教師が非常勤という不安定な立場ながらもそういった機関で働き、9割をネイティブの教師が占めていること。その希少さから成人教育の中で日本語を学習する人数が増えていることが考えられます。

しかし日本語のみを教える常勤のポストは極めて少なく、日本語だけでなくドイツ語やフランス語を教えることを求められるなどの厳しい条件が示されることもあります。
語学教師の専門性への尊重が低いと考えざるを得ません。

カナダ

カナダはその昔、日本からの移民が多かった西部での日本人のための学校から始まり日本語学校が設立され、一時は日本語教育熱が非常に高い国でした。第二次世界大戦の折には学校はすべて閉鎖されましたが、2000年代後半には日本のポップカルチャー人気に牽引され、学習者は増加がみられます。

それでも数字として減少傾向にあるのは、もともと盛んだったブリティッシュ・コロンビア州の中等教育機関の学習者の減少が著しいからです。
正規科目ではあっても必修科目ではない日本語講座は財政的に厳しく、質の良い授業をすることが困難になり、ますます学習者が減るという悪循環に陥っています。

ドイツ

ドイツの日本語学習者の特長は多様であることが挙げられます。中等教育から高等教育、成人教育や企業内研修など、さまざまな場に学習者が存在します。
ベルリン、シュトゥットガルト、デュッセルドルフ、ハンブルグの4都市で行われる日本語能力検定も2007年には1000名を超え、微増傾向にあります。

とはいえ、ドイツでは一般的に労働ビザの取得が困難で、ドイツ人配偶者などに頼らざるを得なく、研鑽を積み努力はしているものの経験が不十分で継続困難になることが予想されています。
そして、学期ごとに契約を結ぶなど非常に不安定な労働条件があり、講座自体の開講が難しい場合も多々あることから、日本語を学習したくても機会がなく難しい状況です。
中等教育で活躍していた日本語教師たちが定年を迎え退職するにあたり引き継げる適任者が見つからず、それを機に日本語教育をカットしようとするという状況もみられます。

(参照URL:国際交流基金

まとめ

日本語学習者が増加している国でも、地域ごとの差や不安定要素はあります。
減少している国については、国の施策の変化や経済状況、また移民政策などにより労働条件そのものが厳しい結果、優秀な教師が育ちにくいという状況がみえました。

今後、欧米での日本語学習者が増加していくかどうかは、やはり日本という国の世界の中での地位が上昇するか否かによるといえます。
また日本側からの積極的なプロモーション次第だとも考えます。米国向けの派遣制度などはその最たるもので、機会あれば大いに利用されることをお勧めします。

日本との距離が遠い西欧の場合はもともと不利な条件にありますが、今はネットで学ぶ環境が整い、個人で自主的に学べるようになりつつあります。ふとした興味からネットを通して日本語を学習し、ますます興味が増していくことを大いに期待したいですね。
そのためにも継続的に学べて、レベルアップしていけるようなネット学習のカリキュラムや方法がさらに整備されることを望みます。

 

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