「スピーチコンテスト」のススメ

年度も終わりに近づく頃、それまでに身につけた日本語力の集大成となるイベント「スピーチコンテスト」が催される学校があります。特に卒業する学生にとってはよい思い出、経験にもなる行事でしょう。

今回はその内容をご紹介します。

スピーチコンテストの目的

二期制であれば、前期にアンケートや調査の結果を発表するというグループワークをさせ、後期は個々に発表するスピーチコンテストを開催するというカリキュラムの場合もあります。ただし、これらは中級レベル以上が対象です。

スピーチコンテストの目的には、次のようなものがあります。

  1. 受け身で参加する授業だけでなく、能動的にアウトプットする機会を持たせる。
  2. 日本語能力試験合格だけでなく、また日常会話だけでなく、大勢の前で自分の考えを伝える経験をさせる。
  3. 言葉だけではない表現方法(身ぶりや表情など)の指導をする。

スピーチコンテスト本番までの流れ

1)テーマの選定
事前にテーマを絞る場合もあれば、自由に書かせる場合もあります。原稿についてはある程度のひな型を渡すと書きやすいでしょう。ここは学生の日本語力によって加減します。

2)原稿書き
まずは一度書かせ、添削します。その後で清書させますが、添削は入れすぎないようにします。作文としての正しさより、スピーチする本人が読みやすい言い回しであることが大切だからです。ここが作文とスピーチ原稿の違いです。
難易度の高い文法事項が入っていなくてもいい。聞く人がわかりやすい表現であることに重きをおきます。語彙の難易度も読んでわかるものではなく、聞いてわかるものにします。
3)スピーチ練習
以下の注意事項をしつこいくらいに伝え、ある程度暗記したのであればリハーサルもさせます。
 ・原稿を読むことがスピーチではなく、伝えることが重要であること。
 ・聞いてわかるスピードにすること。
 ・アイコンタクト、笑顔を忘れないこと。
4)評価方法を考える
授業の一環として教師からの評価ももちろんありますが、学生相互の評価もさせるとよいでしょう。正しく評価し伝えるのも勉強です。点数制、コメントのみ、いろいろあります。
クラス代表を選出する場合は、点数制にする必要がありますね。
5)本番
学生の普段とは違う表情が見える楽しい時間です。

スピーチコンテスト当日の様子

「先生、おなか痛い~」「昨日、眠れなかった」と訴える学生や、静かに緊張している表情の学生など、それぞれの肝っ玉の大きさが見えるようで、教師にとっては新たな発見ができるよい機会になります。

特に上級レベルの学生は普段、授業に対してクールに冷めた態度を見せることも多いので、久しぶりにかわいい姿が見られるかもしれません。

スピーチは自分の経験をもとに考えたことを中心に組み立てられています。自分の国と日本との比較についての内容が一番多いでしょう。子育ての一場面、お年寄りの方への対応、働き方などを比較したスピーチは、聴く日本人側にとってもさまざまな示唆に富み、非常に興味深いものです。

日本での生活が長ければ長いほどその洞察は深くなり、日本人にとっては「あ、バレちゃった?」と苦笑いするようなものもあります。客観的に日本を見つめる機会を学生から与えられます。

原稿を読むだけの学生も少なからずいますが、年齢的に大人でもある学生たちは、原稿を読むだけにならず聴衆を見ながら話します。中には、ここまで豊かな表現力は日本人にはないだろうと思わせるほど、素晴らしいパフォーマンスを見せる学生もいます。

場慣れしていると感じさせる学生からは、生まれ育った国の教育方針がうかがえます。出身国に関係なく表現力の豊かな人、そうでない人、緊張しがちな人、心臓に毛が生えている人などさまざまですが、全体を眺めた場合、その国らしさというのはやはり見えてきます。

スピーチを終えた学生は、ひとつ大きなことを成し遂げた達成感に溢れた表情を見せます。逆に、準備が不十分でよいスピーチでなかった学生の表情は冴えません。それは自分自身が一番わかっていることでしょう。「次回こそは!」と密かに思ってくれるとよいのですが。

まとめ


外国人ならではの視点をもって自分の考えを伝えることは、日本社会の中で一目置かれるためにも必要なことだろうと思います。ただし、それが過度になると疎んじられ、はじかれることもあります。その加減を学ぶよい機会としても、スピーチコンテストは非常に意義があるでしょう。

また、日本語がまだまだ不十分だった学生の成長ぶりを見ることができれば、教師冥利に尽きると感じるでしょう。

そして、もうひとつ。コンテストは学生だけでなく、指導する教師たちにとっても競争心を発揮するよい機会です。伝える工夫を伝授し、自分の担当クラスの学生を勝たせることに燃える教師もいて、とても刺激的です!

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