定住・永住の外国人への日本語教育

「最近、外国人が増えてきたけどみんな観光客なのかな」
「観光客ならあるいっときに増えそうだけど、なんだかずーっと見ると思わない?」
「ということは、定住してるってこと?」

日本人どうしのそんな会話が耳に入りました。確かに日常的に外国人を目にする機会は増えました。でも実際にはどうなんだろうという疑問がわきました。

ここでは、外国人の定住や永住に関する数字と、それに対する国の施策などから今後の課題を探ってみます。

定住・永住の外国人に注目したい

法務省からの資料(http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00065.html)を参考に、日本に住む外国人のデータをご紹介します。

平成28年末における日本に住む外国人の数は約204.4万人で過去最高の数字となりました。前年と比較すると15.6万人増加しています。在留資格別の内訳は、永住者が72.7万人、特別定住者が33.9万人、留学が27.7万人、技能実習が22.9万人、定住者が16.9万人です。特別永住者以外はいずれも増加傾向にあります。

前年比の増加割合でその増加人数を算出すると、留学生が12.4%増なので約3.1万人の増加に対し、永住者は3.8%増なので2.7万人、定住者は4.5%増なので0.7万人となり、永住者と定住者とを合わせた増加人数は3.4万人となり留学生の増加人数と変わりません。

政府が2008年に「留学生30万人計画」を発表して以来、2020年をゴールとしたその数字に向かって着実に留学生は増え続け、今27.7万人と順調に推移しているわけですが、それ以外にも増え続けている永住者・定住者も注目すべきだといえます。

定住者や永住者にこそ日本語教育が必要

定住者とは、在留期間は3年または1年で、更新が必要なビザを有する人のことです。これを繰り返しおおむね10年以上継続して日本に住んだ後には永住申請ができます。そういった更新の必要性以外には定住者と永住者の就労に関しての制限の違いはありません。つまりどちらも生活していくための基盤である就労は可能ということです。

このように日本に長く住む基盤を持てる仕組みはありますが、その日本語力は必ずしも十分とは限りません。日本語が必要でない英語教師などは日本に長く生活しているにも関わらず日本語をあまり話せないということはよくあります。また日本人や日系人の外国人配偶者やその子どもたちは定住者として長い期間生活していくにもかかわらず、日本語を知らないまま日本社会に飛び込まなければならない状況です。

日本語を勉強する機会に恵まれた留学生だけでなく、こういった早急に日本語を使う必要がある永住者や定住者への日本語教育を問題として掲げ取り組んでいく必要性は、その人数の増加とともに高まっています。

「生活者としての外国人」への標準的なカリキュラム案

文化庁が、「生活者としての外国人」への標準的なカリキュラム案を平成22年に発表しました。留学生とは違い、定住者や永住者である外国人は、まとまった学習時間を取ること、継続的に学習していくことが難しい状況にあることがほとんどです。そういった人たちへのカリキュラムは、日本語学校で使われるカリキュラムとは当然違うものである必要があるからです。

また、仕事に必要なビジネスマン、生活に必要な外国人配偶者、学校の勉強に必要な外国人の子どもなどそのニーズは様々です。それぞれに対応するカリキュラムがなければ、実際の教育を担当するボランティアの負担は非常に重いものになります。そういった事情を踏まえ作成された標準的なカリキュラム案は以下のような全30単位のものです。

  • 健康・安全に暮らす(7単位)
  • 住居を確保・維持する(2単位)
  • 消費活動を行う(4.5単位)
  • 目的地に移動する(3.5単位)
  • 人と関わる(2.5単位)
  • 社会の一員となる(4.5単位)
  • 自身を豊かにする(2単位)
  • 情報を収集、発信する(4単位)

内容からわかるようにこれは来日後間もない外国人に向けてのカリキュラムです。文化庁の資料にはこれに対する進め方の解説がありますが、各地域において適宜修正を加えること、学習者の日本語レベルやニーズに合わせることが必要とも書かれています。

さらに詳細版では、大分類・中分類・小分類といった細かい階層で、どういったことを教えればよいか明確に示されています。小分類を見ながらレベルやニーズによって省くこと、またはより丁寧に教えることなどを見極め、ひとりひとりに合ったカリキュラムを作ることができるようになっています。

平成23年には「標準的なカリキュラム案で扱う生活上の行為の事例」が25カ国語版でアップロードされているので、それらを組み換え作成した、学習者にとってもわかりやすいカリキュラムを示すこともできます。

「生活者としての外国人」への教材作り

平成24年には、教材例集も作成されました。中味を見ると、その活動の目標やねらい、準備物のヒントになるイメージのつかみ方、実際の文型などが書かれています。これは使えます。日本語教師的にはいかようにも膨らませられる自由度が高い内容なので、教案を作るやりがいを感じます。
しかし、そのための準備時間はかなりかかりそう…というのが正直なところです。

「生活者としての外国人」への日本語能力評価

学校と違い、学習したことの成果で優劣をつける必要はありません。が、実際の生活の場で自分が何をどこまで理解できるレベルにあるかを示す評価表、ひいてはポートフォリオのようなものを作成することは非常によいことです。

教室を離れたところで出会う生活の場面で、それを示すことができれば対応する側もどういった配慮や準備が必要なのか想像できますし、本人にとってもまだ不十分な事項を知ることによって、次への学習意欲に繋がるからです。ということを考えて、平成24年にはそういった学習者への評価表が作成されました。自分の評価欄と指導者からの評価欄があり、非常にわかりやすいものになっています。

まとめ

以上、法務省のデータから留学生以外の外国人への日本語学習の必要性に触れ、文化庁国語分科会で行われている取り組みについてご紹介しました。非常によいものができているので、これらを利用し、使える日本語を本当に必要とする人たちに教えることができればと強く思います。

しかし、実際問題として考えるとどうでしょう。教えるボランティアの方々も専門家からの評価や指導なしで進めていくのは難しいのではないでしょうか。そういった不安は誰もが想像できることなのでしょう、平成25年には日本語教育ハンドブックが出されています。

平成22年から始まった取り組みはかなり整ってきたといえるかもしれません。あとは人と予算を投入し実践していくだけでしょう。すでに経験ある日本語教師が今後どう関わることができるか、楽しみでもあります。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう