ベトナムの日本語教育事情

日本語学校や専門学校で大勢のベトナム人に出会う機会が増えてきました。日本語学校の学生は今や中国に次いで多いのはベトナム、というデータを実感します。それと共にベトナム人に対するイメージも変わりつつあります。

以前の中国人学生と重なる、ベトナム人学生の今

何十年も前の日本語学校では、中国人学生といえばアルバイトで必死に生活費を稼ぐというイメージでした。睡眠時間を削り仕事をする彼らの授業態度は決してよいものではなく、成績がよいのはアルバイトに必死にならなくてもよい韓国人でした。

しかし今は、豊かな中国人学生が日本にやってきています。ゲームやアニメに夢中で、また違った意味で授業にまじめに向かわないことも。

そして昔アルバイトに必死だった中国人と重なるのは、ベトナム人です。より時給のよいアルバイトをするために夜中に仕事をしている学生も数多くいます。

 

漢字ができるベトナム人が登場

以前に比べ、ベトナム人学生のイメージは少しずつ変わってきました。

今もアルバイトに必死なベトナム人学生は非常に多いです。彼らに助けられている日本企業も多いでしょう。授業中は眠そうな彼らも、仕事先では十分に頼りにされ、生き生きしている様子が作文にも表れます。

そんな中、漢字をある程度身につけてから来日するベトナム人学生に出会う機会が増えました。初級から余裕で学習できているため、その後の日本語力の伸びもよいようです。

以前は、地頭はよいと思われるのに漢字ができなくて思うように伸びず、アルバイトとの両立にも苦労し、希望する進路に進めず帰国していったベトナム人学生が数多くいました。

だからこそ、私の目には新時代の学生という印象に映ります。

 

中等教育、高等教育での日本語教育

この変化の理由として、ベトナムで日本語教育に重きを置かれるようになってからある程度の期間が経ち、一時の流行ではなく、定着した方針として認知されるようになったことが考えられます。

ベトナムでの日本語教育の始まりになったのは、以下の2点の出来事からです。

  • 2001年 ハノイとホーチミンにベトナム日本人財協力センター(VJCC)が開設
  • 2003年 国際交流基金による「ベトナム中等学校における日本語教育試行プロジェクト」開始

そしてこの年から次々とハノイやフエの中学校で、日本語が第1外国語科目として指定されました。

何事も始まってすぐには、方法も未熟で成果にはつながりにくいものです。その頃に中学生だった人であれば現在は20代後半になりますね。方法が確立され、成果にもつながった頃に日本語を勉強し、確実な結果を身につけた学生が今、日本に来ているとも考えられます。

2005年 ハノイの国家大学群の外国語大学付属高校での日本語教育開始

2006年 フエ外国語大学で日本語教育開始

 

日本語教育を継続していく受け皿として、高等教育機関でも日本語教育が継続できる体制が整えられてきました。さらにこの動きは大学院にも広がっています。

2009年 国家大学群の外国語大学に日本語教育専攻の大学院が開設

 

そして、ついに発表されたのが驚きのニュース!

「2016年3月1日、ベトナム全土の小学校で日本語を<第1外国語>として教えることをベトナム教育・訓練省が発表」

でした。

 

ベトナム進出の日系企業は増えている

専門学校のベトナム人学生で、日本企業に就職するつもりの学生たちにその後の予定を尋ねると「ある程度働いた後でベトナムに帰国します」との答えが返ってきました。日系企業も多いからとのことです。より安い労働力を求めてさまざまな国に進出する日本企業ですが、今も増え続けているのでしょうか。

以下、ベトナムに進出日系企業の数の変化です。

  • 2011年:1081拠点 (+10.2%増)
  • 2012年:1211拠点 (+12.0%増)
  • 2013年:1309拠点 (+8.1%増)
  • 2014年:1452拠点 (+10.9%増)
  • 2015年:1578拠点 (+8.7%増)
  • 2016年:1687拠点 (+6.9%増)

増加率は若干下がっていますが、今も着実に増え続けています。専門学校の学生たちが、日本語そして日本での経験を武器に帰国後の安定した豊かな生活を思い描くのも当然の進出ぶりです。

日系企業では、日本語能力試験N2合格を雇用のひとつの目安としていますが、最近では、日本語人材の需要が高く、N3取得者でも積極的に雇用することも増えています。

N2やN1に合格した専門学校の学生たちであれば、日本語力でのアドバンテージはかなり高いものとなるでしょう。加えて日本企業での就労経験!これは大きな武器になるに違いありません。

 

学校以外の教育機関における日本語学習状況

ベトナムでの日本語学習者の内訳は、中等教育が17%、高等教育が30.2%です。これらの内容は上記に書きましたが、それ以上に多いのは学校教育以外の教育機関の52.8%です。
これは、社会人を対象とした教育機関や従業員の企業内教育を行う企業などを指します。日系企業への求職、転職、昇給のために継続して日本語を学習する人が多いことの表れです。

また、新たな動きとしてあるのが、日本での技能実習・研修の予備教育として日本語を学習する人が増えていることです。EPA協定を結んだベトナムには介護や医療現場での人材としても期待されています。

日本とベトナムの関係はますます深まっており、日本語を学びに来る学生、ベトナムで日本語を学習する人たちはまだまだ増加すると考えられます。

 

まとめ

ベトナムでの日本語教育を主導してきたのは、日本政府の支援を受けて、2002年にハノイとホーチミンに開設された「ベトナム日本人材協力センター(ベトナム日本センター/VJCC)」です。

今は教師研修などの日本語教育全般への支援事業は主に国際交流基金ベトナム日本文化交流センター主導となっています。

ベトナムでの日本語教育に興味がある人にとっては、活躍の場がまだまだ出てきそうな楽しみな国といえます。

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