日本語教師が大いに利用したい国際交流基金

国際交流基金といえば、日本語能力試験を実施している機関です。
国際・交流・基金という言葉の響きに近寄りがたいものを感じますが、おなじみの試験に関わっている団体ということであれば少し身近に感じますね。
実はこの団体、日本語を勉強する人にとっても、また教える人にとっても、非常に役立ちます。つまり「使える」のです。
どんなふうに使うことができるのか、少しご紹介します。

 

国際交流基金の3つの事業

「日本の友人を増やし、世界との絆をはぐくむ」という目的の下、3つの交流事業を行っています。

1つ目は「文化芸術交流」で、日本の文化(美術、演劇、音楽、ファッション、デザインなど)を世界に紹介しています。海外で日本映画の上映会を開いたり、陶芸や工芸などの伝統美だけでなく、写真やデザインなどの現代の日本を伝えたりするイベントを主催しています。

2つ目は「日本研究・知的交流」で、海外の日本研究者の支援や、各国の有識者の対話が深まるシンポジウムなどを行っています。

そして3つ目が「日本語教育」に関するもので、世界中のより多くの人が日本語を学ぶ機会が持てるよう、各国の学習環境の整備や日本語教師の派遣を行っており、教材の提供もしています。

 

日本語教育に対する支援内容

国際交流基金は世界24か国、25の海外拠点を持つ独立行政法人です。
つまり国際交流に関する国の政策実施を担う実行部隊といったところでしょうか。
政策に基づいてさまざまな活動が行われていますが、ここでは、日本語教師が興味ある国際交流基金からの派遣事業と、日本語を教えるときに利用できるツールや教材をご紹介します。

国際交流基金からの日本語教師の派遣は敷居が高い?

答えはNOです。さまざまなレベルや段階にある日本語教師を世界に派遣しています。
修士号取得に加え10年以上の教師経験を求める日本語上級専門家もあれば、日本語教育経験がゼロの学生でも応募できる日本語指導助手などもあります。
また日本語教師資格がない人でも派遣される日本語教育サポーター派遣も行われています。
日本語教育に興味がある人、すでに資格を持っている人それぞれに該当するさまざまな派遣プログラムは、生活補助費も出る好待遇なので一度調べてみるのもよいでしょう。

学習者の熟達度を知るツール「JF日本語教育スタンダード」

どんな教材で学習を進めていくかを決めるには、学習者のその時点での熟達度を知ることが必要です。
JFスタンダードは、多言語国家が集まるヨーロッパの言語教育の基盤であるCEFRCommon European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)の考え方を基礎にして作られています。
利用するためのガイドブックも公開されているので安心です。

学習者と授業の目標を作成、共有できる「Can-do」サイト

このサイトを使って授業の目標を作成することで、学習者にも伝えやすくなり、共有も容易に行えるようになります。
学習者にとっても「~できる」を確認し自己評価ができるだけでなく、自分は何ができ、何ができないかを明確に伝えるための材料になります。

成人学習者向け「まるごと 日本のことばと文化」

ことばによるコミュニケーション力をつけるための教材です。
異文化への理解を助ける内容なので、特に海外に住む日本語学習者にとっては興味深い、使いやすい教材だと評判です。
入門から初級1・2、初中級、中級1・2までのレベルがあります。その特長をいくつか挙げます。

  • 最新の学習理論を取り入れている
  • 週1回のペースでも無理なく学べる
  • 最新の日本文化を学べる
  • 音声CDや語彙リストを無料でダウンロードできる
  • eラーニングでのサポートもある

 

「まるごと 日本のことばと文化」をもし使うとしたら

コミュニケーションに重きを置いた教材「まるごと 日本のことばと文化」は、語彙インデックスの対象言語を増やすなどの更新が毎月行われています。評判がよく普及されつつある証拠ですね。
この教材の内容をみて気がついた良い点や効果についてお伝えし、日本語教師がこれを使っていく場合の対象者や留意点について考えてみます。

良い点や効果

コミュニケーション力をつけるために、まず音声でインプットし、口頭でアウトプットする流れで考えられているので、学習者にとって一つひとつのトピックに対して達成感を感じられます。同じ場面に遭遇したときにどうにかできるという自信がつきます。
実際にこれを使って勉強し来日した外国人は、「非常に役立った。何の不安もなかった」とコメントしています。

一つひとつのトピックの中で使われている文法や新しい語彙がテキストに書かれているので、「話すことだけに流されず段階を踏んで成長している。力を積み上げている」と実感でき安心できます。
さまざまな場面を設定して練習を重ねても、実際に知っている語彙が増え、新しい文法事項が身についていることを実感できないと、自分が成長しているのかただ時間を無駄にしているだけなのかわからなくなってしまいますね。

一回ごとが負担の少ない内容なので、自分のペースで自学により進めていけます。また日本語を習う、日本に住む、そのために知っておくとよい日本文化が紹介されているので、日本への興味が広がり、モチベーションを保つのによいと思います。

日本語教師がこれを使う場合の留意点

さらに語彙や文法事項を足すとよいでしょう。
実際の会話を通して、身振りなど身体での表現まで伝えるのもよいと思います。

語彙については、その人が使う可能性のある分野の語彙をもっと増やすことが挙げられます。自国の説明ができるためにはまず語彙が必要ですし、興味ある分野があれば、それについては特にたくさん語れるように語彙を豊かにしておきます。
話す喜びを経験するためのサポートですね。

文法については、さらにコミュニケーション力をつけるために、テキスト通りに会話が進まないときでも柔軟に対応できるようにする練習をするとよいでしょう。
話題を戻す、もう一度質問する、自分の理解度を丁寧に伝えるなどを、好感が持てる言い方でできればベストです。そういった言い方を伝える中で出た新しい文法事項を解説し、練習します。

身振り、手ぶり、顔の表情など、日本人には当たり前の反応が外国人にはわからず、お互いに誤解するということはありがちです。
実際の会話練習の中で大いにその辺りを教師が表現し、また学習者の身振り手振りで誤解されそうなものがあれば、指摘もしておきます。

「まるごと 日本のことばと文化」は自学習もできる教材でもあり、日本語教師がこれを基にさらに広げられる教材でもあります。
コミュニケーション力をつけることが第一の目的である日本在住の外国人や今後増えつつある技能実習生の学習の材料として、非常によいものだと考えられます。

さらによいことがあります!

もう一つ、おすすめする理由があります。
それは、サイト内に教師用ページがあり、そこには教え方のポイントが紹介されているばかりでなく、授業紹介動画もあることです。
最終的には目の前の学習者に合わせていくとしても、サンプルが提供されているのは、教師にとって非常に心強いことです。

 

まとめ

国際交流基金の交流事業をご紹介し、提供されている教材についての考察をお伝えしました。海外で日本語教師としての経験を積みたい、視野を広げたい、と考える方はどうぞ国際交流基金の派遣事業に応募してみてください。
また、日本で生活する外国人や技能実習生など、コミュニケーション力をつけることを目的とした学習を進める場合に役立つ教材も、ぜひ活用してみてください。
国際交流基金のサイトには、他にも役立つ情報が満載です。日々更新もされていますので、ぜひ折々チェックされることをおすすめします。

 

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