日本語教師を目指す人の中には「外国で仕事をしたい」という目標を一番に掲げている方が少なからずいるのではないでしょうか。
もし行先のひとつとしてアメリカをお考えである場合、「J-LEAP(Japanese Language Education Assistant Program)」というぴったりのプログラムがありますのでご紹介します。
目次
J-LEAP(米国若手日本語教員)派遣事業とは?
2010年の日米首脳会談で合意された日米同盟深化の柱のひとつである「日米間の文化・人材交流」と「米国日本語教育への支援を強化」することを目的に、国際交流基金が行っている事業です。
2011年から毎年、意欲ある日本の若手日本語教員を任期2年として米国の日本語教育機関に派遣しています。
2011年に派遣された人たちが第1期生となり、2017年派遣の人たちが第7期生となります。
どんなことをするの?
米国内の初中等教育機関で、授業、教材・カリキュラム作成、宿題・テスト評価などを行います。機関から派遣された日本語教師のティーチングアシスタントという立場で、あくまで補助活動という位置づけで、単独で授業をすることはありません。
しかし、授業の一部、授業開始時のウォームアップや会話練習などを受け持つことはあります。また、受け入れ機関やその地域においての日本文化・社会理解促進の関する活動も行います。日本文化への基礎知識や多少の実践ができるといいですね。
お給料は出るの?保険は?
旅費:赴任時、帰国時の旅費(航空費、支度料、移転料)
報酬:基本報酬+在勤加算
例えば、オレゴン州であれば、基本報酬75,250円に加えて、在勤加算119,700円が毎月支給となります。在勤加算額は派遣国の物価、生活水準、為替変動によって変動があります。
・保険:必要に応じ、車両保険や海外旅行保険の費用が補助されます。
・住居:7月下旬に派遣され、11月30日までは無償のホームステイが準備されていますが、それ以降は住居変更ができます。住居費の上限額は$80として支給されます。
アメリカの物価は日本と似ているので、お給料の額も日本と変わらず安心ですね。その上、住居費も支給されますから金銭面で安心です。
ひとつ注意したいことは、海外旅行保険加入のために派遣前に一括で45万円程度必要であることです。渡米前に45万円程度の半額が支給され、2年目に残り1年分である半額が支給されますが、一時的な立替が必要です。
応募資格は?
以下のことすべてを満たす必要があります。
- 日本国籍であり、日本語を母語とする
- 平成30年4月1日現在で満35歳未満である(平成30年 第8期生募集の場合)
- 4年生大学卒業以上の学歴がある
- いずれかの条件を満たす
- 大学または大学院で日本語教育を主専攻または副専攻として修了している
- 日本語教育能力検定試験に合格している
- 日本語教師養成講座(420時間)を修了している
- 心身共に健康
- 普通自動車第一種免許取得
- 基本的な英語力がある
未経験でも日本語教師のアシスタント的立場としての経験ができます!
ただし、年齢制限があります。
また、車社会のアメリカでは普通自動車免許は必須です。
通勤、買い物など自立した生活をするためには欠かせないものとして車はとらえられています。自動車免許を持っていない場合は不採用とも書かれていますので注意しましょう。
基本的な英語力も条件にありますからTOEICでの高得点などの証明があると有利です。
参考までにTOEICでは600点以上が日常生活でどうにか足りる程度、700点以上が仕事として英語を使える最低限ラインといわれます。
他、歓迎できる事項として、海外在住経験、他の職歴経験があります。
募集開始は毎年11月中旬から始まります。12月には説明会なども行われ、募集の締切は1月中旬です。
書類選考と面接選考を経て、3月に内定となります。
5月下旬には派遣前研修があり、7月下旬に渡米というスケジュールです。
派遣された人たちの言葉から
報告レポートから気づくのは、自主的に日本文化を広める行動をしている=求められる、ということです。校内で日本語クラブを作ったこと、州が主催する日本文化を経験するキャンプの企画運営に関わったことなどが書かれています。このプロジェクトが若手に限られているのも、こういった自由なアイデアと行動に期待されてのことでしょう。
授業については、教材の作成や会話の発音指導だけでなく、文化についてのプレゼンテーションなども求められます。書道や茶道、和太鼓、空手などの一般的に知られている日本文化だけでなく、日本人独特の考え方や日本独特のやり方などについて伝えることができれば、さらによいのではと考えます。
このプログラムを経験して得られること
アメリカの教育の一端に関われることそのものが貴重な体験
例えばプレゼンテーション力のあるアメリカ人たちはどういった教育を経てその力を身に付けているのか知ることができます。
また、世界共通語としての英語を母語としている国での外国語教育の位置づけについて知る機会となります。
日本と大きく違う状況の中、すべてが刺激となり将来の自分を作る上でのよい糧となります。
日本の文化や日本人を見つめ直す機会になる
日本文化をプレゼンテーションする機会を与えられたときは、まるで自分が日本人代表となったように感じられることでしょう。その責任を果たそうと思えば、否が応でも日本文化について深く考えずにはいられません。
書道、茶道、和太鼓、空手などの背景までも知る必要があることもあれば、日本社会で重きを置かれること、日本人全体としてのやり方の意味を深く考えることにもなります。謙虚であること、和を大事にすること、社会の細かいルールを守ることなど、日本に居ればときに面倒に感じたり、硬すぎる、古くさいと思ったりすることが異国では高く評価されることもあります。
また、単純におかしい、変だと思われることもあります。そういった経験を通して、日本という国の状況、歴史を深く考察する機会を与えられるのです。
まとめ
日本語学校に来る学生は少なからず自国で日本文化や日本語に触れる機会があり、その末に留学先に日本を選び来日しています。最近は来日後いきなり上級クラスに入るほどの日本語力を身につけている学生も少なくありません。教師の間で、彼らの国では日本語学習はどういった位置づけなのだろう、どんなふうに教えているのだろうと話題になることもよくあります。
こういったプログラムを通して貴重な経験を積んで来てください。豊富な経験と広い見識をもった留学生にとってより頼りになる素晴らしい先生となられることを期待します。
参考URL:国際交流基金 米国若手日本語教員(J-LEAP)派遣事業
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/voice/j-leap/index.html