不足しているIT人材を育てて日本に送る試み

先日、とても気持ちのよいインド人の若者に出会いました。
彼は自国で大学を卒業し、日本の会社へ直接応募し5つの会社の面接を受け、そのうち3つの会社に合格し、今は研究開発の仕事に携わっています。日本人であればだれもが知っている大企業です。
なめらかな日本語を使い、自然な笑顔で、すっかり日本での生活になじみ満足している様子に、こちらも嬉しく思いました。

彼は特別優秀だったのかもしれません。ですが、
「コミュニケーションに必要な日本語を滞りなく使えるのなら外国人でも雇いたい」
「英語も堪能であればなおさら外国人を雇いたい」
そういった動きは今後、増えてくるのではないでしょうか。

 

IT人材不足は深刻化している

2019年卒大学生を対象にした企業の採用活動で、IT(情報技術)人材の争奪が過熱している。人工知能(AI)やビッグデータの活用拡大が背景にあり、富士通は人材確保を重要戦略にリクルーターを2017年比4割増やした。学生に自社の魅力を直接伝える機会を増やすIT人材の不足がより鮮明になる「19年危機」を前に各社が身構え始めている。

(参照URL:日本経済新聞

IT人材が日本国内の学生だけでは十分ではない状況の中、優秀であれば国籍は問わないという企業は、今後当然出てくるでしょう。そこでネックになるのはコミュニケーション力。残念ながら日本人は英語が苦手で、日本人の前では日本語を、外国人の前では英語をと、自由自在に操れる人は多くありません。できれば外国人に日本語を使ってもらいたいと考える会社がまだまだ多い状況です。

ITといって思い浮かべるのはインドです。
ゼロの概念を発見したインドは、「インド式数学」、「インド式計算術」などの本も出ているほど、数学つまり理系に長けているイメージがあります。
インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロールには世界のトップ企業が集結しているともいわれています。

すでに有名になっているということは、当然その価値は上がってしまっています。
製造業でも中国が下火になってきたのは、人件費の安さを背景にした低コストの製品を提供できなくなったからです。
インドのITエンジニアについても然り。今ではインドのITエンジニアは決して低コストではありません。
海外にソフトウェア開発などを外注することを“オフショア”といいますが、その発注先であったタイやベトナムも低コストではなくなってきています。

 

次なるIT人材は、バングラデシュ?

インドと同じルーツを持ち、まだまだ低コストが見込めるバングラデシュ人たちは、優秀なIT人材になり得ると注目され始めています。
それを見越してか、すでに日本へ優秀なIT人材を送る仕組みは始まっていました。

バングラデシュにある「ダフォルディルジャパン・ランゲージスクール」の代表者は日本人で、バングラデシュ最大の私立大学であるダフォルディルグループとの合弁で開設された日本語学校です。このダフォルディルグループは元々がIT教育を専門とし、コンピュータ販売で成功している企業グループでもあります。
代表者である日本人とメールを交わしたのはもう何年も前のことですが、そのときに日本語能力検定N2レベルの学生を育てるつもりだと話していました。
“N2レベル” ― これを十分と見るか不十分とみるかはそれぞれでしょうが、日本語でのコミュニケーションが可能であることは大きな強みです。

スリランカのIT人材も期待できます

バングラデシュだけでなく、他の国々はどうなのでしょうか。特にインドブランドに期待できるインド系の国スリランカについて少し調べてみました。

スリランカの専門学校「SIBT」と連携したプログラムが、日本の「株式会社Arinos」ですでに始まっています。
その内容は、スリランカトップクラスの現役大学生や現地の日本企業に勤める優秀な日本語学習者にビジネス教育を行い、論理的思考や日本の商習慣について学んだ後に日本企業に紹介するというものです。
学習はすべて日本語で実施されているので、実際に仕事で使われる語彙を覚えられるのはもちろん、仕事の進め方についてもすでに習得済みであることが期待できます。

どんなに優秀な人材でも来日後しばらくの間、まずは日本でのやり方に慣れてもらう時間が必要です。日本の当たり前が外国人にとっては理解不可能、ストレスになる、不満を持つ、ということは実際に日本に住む外国人からの文句として数多く耳にします。
優秀な人材であればどこにでも行けますから、不十分な理解がきっかけとなり簡単に辞めてしまうことも予想できます。そういった失敗を事前に防ぐために、非常に有効なプログラムです。

広く世界に目を向けてこそおもしろい

日本語学校に留学してくる学生の国別割合は中国・ベトナム・台湾・韓国の順なので、イコール日本語人気の高い順と考えがちですが、そうとは簡単に言い切れない問題があります。いうまでもなく来日するためにはビザが必要で、ビザが却下されれば来日できないのです。行きたかったが行けなかった…という人たちはもちろん存在しています。
自国と日本での物価の違いがあり、国の発展度の違いによって来日できる層の幅の違いもあります。
こういったこともふまえ、日本語教師としては、日本に興味があり、日本語を学びたいというニーズがある場所ならどこにでも行きたい!といった思いで、広く世界に目を向けることも必要でしょう。
それがこの仕事のおもしろさ、醍醐味ともいえましょう。
そのためには世界のビジネス情勢、特に人の動きに関することについて知り、そこから先を予測することも大事だろうと考えます。

余談ですが、先に書いたインド人の若者に久しぶりに日本で会ったインド人の日本語教師は、感激し涙を浮かべていました。教え子が立派に日本で活躍する姿を見て嬉しかったのでしょう。
日本にいればただの語学教師でしかないと思うことも多々ありますが、その語学を身につけた後に輝く未来がある場合、その学生にとっての日本語教師の貢献度は大きく変わります。
できればそんな仕事をしたいと強く思いながら、その光景を眺めました。

 

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