慢性的な日本語教師不足が叫ばれています。ということは、教える対象である留学生も増えている?とはだれもが考えることですね。
実際にはどういった傾向・推移があるのでしょうか。
留学生数はうなぎのぼりで増えている
まずは、全体的な留学生の推移グラフを挙げてみます。
図の下部の小さな文字は、以下の通りです。
『※「出入国管理及び難民認定法」の改正(平成21年7月15日公布)により、平成22年7月1日付けで在留資格「留学」「就学」が一本化されたことから、平成23年5月以降は日本語教育機関に在籍する留学生も含めた留学生数も計上』
日本語学校の学生も含め留学生はまさにうなぎのぼりといったところですね。
このうち日本語学校に在籍する学生の数についてのさらに詳しいグラフを挙げてみます。
日本語学校の学生が、就学ビザから留学ビザに変わった平成23年から日本語教育機関の数字として登場しています。みごとな右肩上がりのグラフですね。平成26年からその数字を拾ってみると、平成26年が44970人、平成27年が56317人、平成28年が68165人です。ここ2年ほどで13000人以上増えているのですから、各学校の規模を考えると、学校数も教師数も増えていって当然でしょう
中学人留学生が約41%、ベトナム人留学生が約23%
留学生全体から見た中国の留学生数は、平成28年が約98,000人、前年度は約94,000人でした。中国からの留学生の伸びは鈍化しているとはいえ、今なお増加傾向にあります。日本語学校の中国人学生からの「国では志望校に合格できなかったから、日本で有名な大学に行きたい」「国では行きたい科の難易度が高すぎたから、日本ではその勉強をやり直したい」という声を思い出しました。
ベトナムからの留学生は、平成28年が約53800人、前年度は約39000人でした。以前は中国人がほとんどを占める日本語学校がかなりの数ありましたが、今はベトナム人がほとんどを占める日本語学校が増えていると聞きます。ほんの1年で2万人も増えていれば、特に新設の学校ではそういったこともあり得ますね。
この後に続く国は、ネパール、韓国、台湾と続きます。ネパールが約3000人、台湾が約1000人増えているのに対して、韓国は約200人だけの増加です。今後は減少傾向になっていくとも考えられます。
特に注目していただきたいのは、それぞれの国の数の違いです。中国・ベトナムからの留学生を合わせると、全留学生に占める割合は約64%も占めています。
中学人留学生が約37%、ベトナム人留学生が約33%
日本の大学に進学するための準備機関ともいえる日本語学校の数字は、数年後の大学へとシフトしていく数字と似通ったものになるでしょう。ここ数年の日本語学校の留学生数、国別内訳をみてみましょう。
平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | |
中国 | 16118 | 17655 | 19248(36.8%) |
ベトナム | 13758 | 15715 | 17334(33.2) |
ネパール | 4779 | 6301 | 3973 (7.6) |
韓国 | 2081 | 2041 | 1763 (3.8) |
台湾 | 1837 | 2070 | 1970 (3.4) |
スリランカ | 619 | 1102 | 1536 (2.9) |
ミャンマー | 520 | 1067 | 1390 (2.7) |
タイ | 580 | 630 | 500 (1.0) |
インドネシア | 485 | 594 | 753 (1.4) |
モンゴル | 407 | 571 | 488 (0.9) |
中国、ベトナム、スリランカ、ミャンマー、インドネシアの国の学生が依然として増加傾向にあります。
こういった学生たちが大学や専門学校に入学していけばそれがそのまま留学生全体の数字に重なっていくわけですね。
留学生頼みの大学もある
日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、2014年度の私学における入学定員未充足校は、集計した大学578校のうち265校(45.8%)、短期大学320校のうち207校(64.7%)とあります。
こういった大学では、学生を確保するために外国人留学生を受け入れることは必須のこととなっています。留学生なしでは定員確保さえも難しい大学があるのです。
そういった大学の中には、数の確保を優先するあまり選考基準を甘くし、日本語力が十分でない学生を入学させる大学もあります。こういった傾向は留学生に限ったことではなく、日本人学生でも大学で高校の勉強をやり直す話もありますから、賛成はしないまでもあり得ることでしょう。
しかし在学中に十分な日本語力をつけるためのカリキュラムがきちんとできているかは各大学の努力によって変えられることでしょうから、ぜひとも真剣に取り組んでほしいものです。
緊張して試験を受け、面接を受け、合格を聞いたときには大喜びをし、大学に入ったら今度こそ日本語を身につけると修学意欲に燃えた学生たちの心を勉強以外のことに向けすぎないように。
大学の先にある日本への就職の道を少しでも広げられるように。
日本留学AWARDS
一般財団法人日本語教育振興協会「日本語学校教育研究大会」主催で、留学生の環境整備を目的に設立した賞に「日本留学AWARDS」があります。選考方法はウェブアンケート回答方式。一般財団法人日本語教育振興協会の会員校が、「学生に勧めたいかどうか」という視点で投票しました。学校名、投票者、そして選んだ理由を明記することとし、責任持った内容そして信頼しうる結果となるよう留意されています。
2017年の結果で東と西から2校ずつ挙げると、専門学校では東京国際ビジネスカレッジと辻調理士専門学校、私立大学文科系が東洋大学と四日市大学、理工系が足利工業大学と福井工業大学、国公立大学が横浜国立大学と名古屋大学、大学院が早稲田大学大学院と北陸先端科学技術大学院大学が選ばれています。
まとめ
日本語学校の進学担当者向けのワークショップも開かれています。日本留学AWARDS受賞校と日本語学校が出会い、双方への理解を深め、より適切な進路アドバイスができるための連携強化を目指しているとのことです。
日本語学校を卒業した学生たちが、大学や専門学校でさらに充実した有意義な学生生活が送れるよう、こういった機会が増えていくことを願っています。