新人日本語教師が越えるべき3つの壁

資格をとって意気揚々と日本語教師を始めました。
「教わった通りに実践する!」「自分独自のアイデアを生かす!」とそれぞれの思いを持って授業に臨むわけですが、しばらくして悩みも出てきます。
授業に行くのがつらくなります。学生のノリも今一つになります。そうなると悪循環。
でもそこを乗り越えてほしいのです。

今回は、新人日本語教師がぶつかる壁についてご紹介しましょう。

新人教師ならではの壁は越えられます!

年数を重ねたからといって変わらない問題もあるでしょうが、ここではある程度経験をすれば越えられるであろう問題、壁についてお伝えします。

① 授業準備にあまりに時間がかかってつらい

90分×2コマのためにあまりに多くの時間をかけ、授業準備を含めて時給換算すれば数百円になることもザラでした。
「やってられない!」と叫びたくなったことは何度もあります。その末にうまくいけばいいですが、そうでなかったときにはもう泣きたくなります。
どう教えるか最後までいいアイデアが浮かばず、通勤電車の中でもさらにいい例文を考えていたときもあり、疲れました。
今思えば、ある程度のところでよしとし、自分の気持ちや体調を整えておく方が大事だったと感じます。

② 学生をひきつけられない

午前もしくは午後いっぱい授業を受け持つことが普通なので、学生をひきつけられない、もしくはほんの一部の学生しか熱心に聞かないといった状況で教壇に立つのはかなりの苦痛です。
自分のやり方が悪いのかと思い、ひきつけるために笑いをとろうと自虐ネタを使えば身を削ってまで頑張ることになります。
こういった本末転倒にもなる学生に媚びる方法は、結局は続かないようです。
体調を崩して辞める人もたまにいらっしゃいますが、非常に真面目で熱心に頑張っていらしたように思います。無理のし過ぎは禁物です。

③ 誰にも相談できず孤独になる

専任講師による授業見学や授業指導が行なわれているのは、まだよいかもしれません。
それでも研修が数回で終わり、まだまだ不安という声も聞こえます。
一方、毎授業分、教案を書いて見せるように指導され、それが嫌で辞めてしまったという話も聞いたことがあります。
これはこれで研修の仕方にも問題があったのでしょうか。自分に合った授業をしていく道を探る中で、ときどき言葉を添えてくれたり、ヒントをくれるような先輩教師や同僚がいればいいですね。

それぞれの壁の越え方へのヒント

自分自身の経験とあわせ、まわりのベテラン日本語教師の方々とも接する中で掴んだヒントをお伝えします。お役に立てればうれしいです。

① 授業準備に時間がかかるのは当然

時間がかかってしんどいという訴えに共感することはできますが、それをしてこその成長だと思います。
この説明の仕方でわかりやすいか?この例文は最適か?など、何年経っても考え続けます。それが新人であれば、説明の仕方自体も試行錯誤し、例文を選び出すための基準さえ曖昧ですから、時間がかかって当然でしょう。

説明や例文の正解は、目の前の学生のレベルに合っているかどうかに尽きます。マンツーマンのレッスンでない限り、クラス全体を見据えてレベルを感じ取るしかないのです。
ある程度経験を積んでくると、初めての授業でクラス全体のレベルを掴んで帰ってきます。その上で以降の授業の程度を決めるのです。
迷いや見誤りは年々少なくなっていきますね。

その把握の方法は、《会話をさせる》《文章を作らせる》《練習問題の正解率を見る》などです。

最近の傾向は日本語能力試験の対策を自国で行なってくる学生も多いので、練習問題の正解率は高いです。しかし、話すこと、書くことは非常に弱いです。

② 学生をひきつけられない原因は?

初めの頃は、クラスを4つ受け持てば、そのうちの2つか3つは学生と心を通わせられない結果になりがちでした。
もっと若い先生なら年が近いしやりやすいだろうな、もっと冗談を言うべきかな、などといろいろ考えましたが、若い先生たちもまた、彼らなりの悩みがあるようでした。
やはり原因追求は、自分自身で真剣に取り組まないといけませんね。

原因として考えられることは、二つ。それぞれについて、私なりの対策をお伝えします。

学生のレベルと授業レベルが合っていない

これは、教師自身の努力でクリアできる問題です。
初級、中級、上級とクラス分けされていても、実際の力は違うことがあります。使うテキストはレベルに沿ったものであっても、それを簡単にするも難しくするも教師次第です。

たとえば優秀なクラスであれば、説明もハイレベルなところまで行ない、簡単で復習的な説明や練習は思い切って切る。そうでないクラスであれば、決してハイレベルなところには触れない。この見極めを正しくすることと、それを一貫して行なうことが重要です。

その日の学生の様子や自分の調子次第でこのレベルを上げ下げしたくなりますが、経験上、それはしない方がよいと思います。
わかりやすさや、学生自身が積極的に学習に向かうためのリラックスした雰囲気は、毎回安定したレベルで行なわれる授業から生まれます。

学生自身の勉強意欲が足りない

特に進路が決まった後は欠席も多くなりがちで、クラス全体にも人それぞれといった空気が流れ、雰囲気としては悪いです。やっきになって勉強に向かわせようとしても空回りします。
日本語学校に来ている留学生たちも目標がさまざまですし、自分の考えを持った大人なので、これはいたしかたないところだろうと割り切ることもひとつの手です。
「自分は教師なのだから」と誇りを持つのはいいことですが、学生は子どもではないということを忘れてはいけません。
小中高で自分が受けた教育をなぞってはいけません。成人教育は違います。

ただし自分の授業だけが雰囲気が悪いのであれば、それは改善しなければいけませんね。
そのためにも同じクラスを受け持つ別の先生に様子を聞くことも大切です。

③ 誰かに“おしゃべり”してみましょう

これは日本語教師に限らずどんな仕事場でも必要なことなのですが、自分が真剣に向かう仕事に関して共に仕事をしている人と話をすることは絶対に必要です。ただのおしゃべりでもよいのです。
教師という仕事は一回一回の授業がすべて、毎日が本番という特殊性はありますが、だからといって毎回一人で何とかしなければいけないものではありません。
人と接する仕事は正解がないし、終わりがない。それを承知の上でこの仕事を選んでいる人同士ですから、必ずどこか共通点もあります。先入観にとらわれず、まずは話しかけてみましょう。

こういったことをしない先生も中にはいらっしゃり、強いハートをお持ちだと感心します。矛盾するようですが、それもアリなのがこの仕事のよさでもあります。
でも教えることが大好きな人たちなので、新人教師にも教えるのは決して嫌いではありませんから、相談してみてください。年齢をどんなに重ねていてもそこは関係なく、教えを乞う姿勢はあってよいと思います。

まとめ


教える技術を日々、実践で積んでいくのは大前提です。しかしその技術を発揮するためには、次のようなことが大切です。

  • 目の前の学生の力や背景をきちんと見られること
  • 心からの笑顔を向けられること
  • 学生の日本語力向上を常に忘れないで仕事を全うすること
  • 学生を愛せること
  • 自分の体調を整えて授業に向かうこと
  • 自分の仕事を楽しむこと

などが挙げられます。
また、ひとりよがりにならないために、そして短期間で成長するために、他の日本語教師との“おしゃべり”も必要です。

結局は、日本語教師といえども、仕事として向かう姿勢は他の仕事と違いはないと思います。
よい日本語教師になれる人は、他の仕事でももちろんいい仕事ができます。
自分のしたいこととして日本語教師を選んだ以上、四の五の言わず、いい仕事人になってください。
うまくいかない理由を、日本語教師の特殊性のせいにしないでください。
壁を乗り越えた先では、この仕事を選んだときに思い描いていた楽しさや醍醐味といった甘い果実が必ず得られます。健闘をお祈りいたします。

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