多様化する留学生の事情と国別傾向

圧倒的に中国・韓国からの学生が多かった時代から少しずつ変わり、様々な国から学生が来日するようになりました。

ここではアジアの学生たちに絞り、彼らの様子をお伝えします。

日本語教師を目指す方々や現役教師の方々が、どういった背景を想像しながら接していけばよいか、考えるきっかけになればと思います。

学生の金銭事情

もちろん一人ひとりの事情は違いますが、国別の傾向をお伝えします。

中国、韓国、台湾、香港の学生たち

20歳前後の学生の場合、親からの十分な仕送りを受けている学生が多いです。アルバイトも経験程度にはしようと考えますが、入学早々にアルバイトを探すといった様子は見られません。

「勉強ができなくなるからアルバイトはしない」と宣言する学生も少なくありません。着ている服や持ち物を見ても、金銭的に余裕があることが感じられます。

将来、日本に就職したいか問いかけると、「未定」であることがほとんどです。年齢的には当然ともいえます。詳しく話を聞くと、「本当は欧米系の国々への留学を望んでいたが学費が高すぎて断念した」との声も多く聞かれます。

25歳を過ぎてから来ている学生の場合、学費や生活費は自国にいたときに自分で稼いで貯めた資金で来ている場合がよくあります。特に、自立度が高いと感じられる台湾や香港の学生に多く見られます。

こういった学生は可能であれば日本で就職したいと考え来日し、日本語の勉強を頑張ると同時に、就職活動にも精を出すといったこともあります。

学生たちの学習意欲は高く、年齢的な成熟度も持ち合わせているので、授業のやりやすさという点では一番です。動機が明確で、日本でしっかり生活するためには日本語力が必要であると理解できています。

つまりそれは、真面目な学習を保つには重要であると、彼らを見ているとよくわかります。

 

ベトナム、フィリピン、インドネシア、ネパールなどのアジア系の学生たち

アルバイトの必要がなく勉強に専念できる学生も中にはいますが、割合としては非常に少ないです。日本語学校に留学できるということは、自国の中では裕福な学生であることが多いです。

しかし、日本との物価の違いから、生活費や学費を補うためにアルバイトが必要な状況の学生がほとんどでしょう。これらの国からの学生については、年齢問わず金銭的には厳しい状況であることが多いです。

そして、“多額のお金をかけているのだから”という感覚の違いからでしょうか、将来の希望を実現させたいという思いが強いです。教える側からすれば、「応援したい、頑張ってほしい」と心から思わせられる学生たちでしょう。

 

就職に必要な日本語力の習熟度

漢字圏か非漢字圏かによって、日本語力を身につけるまでに大きな違いがあります。

中国、韓国、台湾、香港の学生たち

中国、台湾など漢字圏の学生の場合、日本語能力試験を受けるときには圧倒的に有利です。

漢字の意味はおおむね同じで語彙問題に強く、読解についても文章全体の意味を短時間で掴むために、細かい文法にまで頭を回し、解いていくことができます。

これは普段の授業でも大きな違いとして表れます。

上級の読解授業中、まず漢字で書かれた言葉の読み方や意味を調べるところから始まる非漢字圏の学生。

一方、文法に注意しながら読み進めていく漢字圏の学生。

その違いを事実として目の当たりにすると、少しショックを受けることがあります。

漢字圏の学生は当然の結果として、非漢字圏の学生に比べ難易度の高い大学や専門学校に挑戦しやすく、実際によい結果を残します。

また、ビジネスや観光分野での日本との関わりの深さから仕事を見つけやすいので、日本語学校を卒業後すぐに就職といった学生も見られます。

 

ベトナム、フィリピン、インドネシア、ネパールなどのアジア系の学生たち

非漢字圏の学生で上級まで上がってくる学生は、勉強熱心で努力家、地頭もいい学生が多いです。

それでも卒業までにN1を取得できる学生はごく稀で、N2を取得できただけでも十分という認識です。最低N3は取得して卒業できることを望みます。

しかし、アルバイトだけで目一杯だった学生はN4もままならず、日本語もろくに話せないまま卒業を迎えることも実際にあります。

その場合、日本語力を求められない専門学校や別の日本語学校へ入学するほかない、ということもあり得ます。

彼らにとって決して安くない学費を払い続け、夏休みはアルバイトに精を出す生活が長く続くことを思うと不憫でなりません。こういった学生にこそ、モチベーションを高く持ち続けるための教師側のサポートが必要なのではと思います。

 

まとめ

どの国からの学生であっても、外国である日本にわざわざやってきているのですから、希望する将来像に向かって進んでいけるよう、ぜひとも手助けしたいものです。これは日本語を教えるためだけにとどまりません。

金銭的余裕がある学生であれば目標を見失わないように、時間を無駄にしないようにという目配りが必要でしょう。

金銭的に厳しい学生であれば、「生活の厳しさから将来の希望を断念することのないように」と、声掛けや励ましが必要でしょう。

学生がまだまだ若い場合、ただ学生の希望を聞いてそれに沿うだけでは足りません。海外生活という貴重な体験、そして時間もお金も決して無駄にすることのないよう、一人ひとりに誠実に接していきたいものです。

また、それらを大切と考える日本語学校であり続けるよう願うばかりです。

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