日本語学校での進路指導は一筋縄ではいかない

ひと昔前の日本語学校と違い、年齢的にも、精神的にも十分大人だと感じられる学生が多くなりました。
それに伴って、進路の希望は実に様々になってきています。進路指導も簡単ではありません。

学生の進路は様々

大学や大学院への進学に迷いがない学生

日本の高校生と同じ年齢の留学生を指導することは簡単です。もともと日本の大学や専門学校への進学を目的に来日し、両親の励ましも一貫したものだからです。親御さんからの経済的支援も十分あり、学生自身も勉強するのは当たり前と考え、勉学に励んでいます。いい成績を取ること以外に目を向けないでいられる環境は、ある意味幸せなものだと思います。

国で大学を卒業し、日本で大学院を目指す学生を指導することも難しくありません。それ相応のお金の準備をしていますし、進学を考えている学生はその先も見つめ、日本語学習についても熱心です。勉強に気持ちが向いている学生は出席率もよいですね。

専門学校への進学の学生は2つのタイプ

一方、自分の国で大学を卒業した、していないまでも成人になって久しい学生は数多くいます。クラスに20人の学生がいるとすれば、高校生の年齢の学生はせいぜい2人というところなのではないでしょうか。それ以外は国で大学を卒業していたり、社会人経験ありの学生です。この中で専門学校を目指す学生がいますが、種類としては2つのタイプが見受けられます。

・どこの専門学校に行くのかをすでに決めている

来日前に日本独自の産業、たとえばアニメ制作について勉強したいなど、目的がしっかりしている学生がいます。授業中の態度もまじめで、目標があるのでブレもなく計画通りに進学していきます。

・とりあえず専門学校

大学や大学院に行くためには、日本語能力検定のN1、最低でもN2に合格することを求められます。漢字圏の学生でない場合や漢字圏の学生であっても勉強をおろそかにしてきた学生は、2年在籍してもN2がとれないということはありえます。そういった場合、専門学校を選ばざるを得ません。専門学校であればN3、またはN3がなくても出席率が極端に悪くなければ合格できる可能性は高いからです。

就職を考えている学生

留学ビザから就労ビザへの切り替えを考える学生は近年増えているだろうと思います。来日前に社会人経験が十分にある学生もいて、それを生かしたいと考える学生もいます。ただ実際にはそういった希望が叶う仕事にはなかなかつけず、しかたなくビザ取得のために決めた仕事でストレスがたまり、体を壊す場合もあります。

そういった非常に残念な結果はさておき、日本で仕事をしていくという目標がある場合、日本語が不十分では仕事は上手くできませんし、自分の勤勉さを証明する証拠を日本語学校で得る必要がありますから、総じて真面目な学生が多いです。「勤勉さを証明する証拠」としては、出席率の高さ、よい成績、日本語能力検定合格などが挙げられます。

機会があれば別のチャンスを狙っている学生

すでに来日している同胞を頼り、自分なりの計画を持ってきている学生もいます。そういった学生は留学ビザの次に就労ビザや投資ビザに切り替えます。
ただし留学ビザがその学生にとって合法的な滞在のための手段でしかない場合は、出席率も悪く成績もさほどよくありません。
また、そのことを教師が正面きっては話せないということを学生も理解しており、進路指導の先生との間で頭脳戦が繰り広げられます。このため、学校側からの進路指導は非常に困難です

学校は日本語を教えることが仕事なので、勉学に励まない学生は正直扱いに困ります。もちろん生活に日本語は必要ですが、進学でなく自力でビザを切り替えることを考えている場合は、出席率もぎりぎりを狙うことになりがちです。

色々な国勢も関係しているのでしょうか、日本に住みたい、家族を呼び寄せたいと望む学生が、1クラスに1名いるかいないかといった割合で在籍しています。そういった学生は年齢的にも十分大人で、計画性もあり、進路指導以前に本人自身でよく考え、調査している場合も多々あります。国を出て異国で新しい生活を営んでいこうと考える学生は、能力、賢さ、勇気も十分持ち合わせているので、指導は面接のテクニカルな部分のみに留まることも多いです。

学校側がする進路指導の内容

願書や申請書の書き方

様々な進路が考えられる中、学校も親身になって学生の将来のために心を砕いています。願書や申請書の書き方の指導をはじめ、とにかく丁寧に気長に行う必要があり、日本人の学生相手のように必要事項を伝達するだけで十分ということはありません。

加えて異国での生活から来る解放感からか、マイルールで動く学生が多く、書き方指導が必要な学生であってもなかなか指導を受けに来ないといったことがありがちです。そういった学生に何度も声をかけ、こちらで出願締切日を把握し、まさにお尻を叩いて進ませることも多々あります。

学校の規模によっては複数の学生でこのような事態が起こり、進路指導担当の大変さは増します。しかし学生の将来がかかっていると思えばこそ、諦めずに指導にあたります。学生本人より担当教師の方が真剣な場合もあり、みごと良い結果が出た後には感謝もされるのですが。

期限内に必要書類を集めるために日々確認

自分の国から書類を取り寄せなければならない場合、当然日数もかかります。国の祝日と重なることもあり、予定通りには届かないということもあります。実は学生自身がのんびりしているという理由がほとんどなのですが、いざ重い腰を上げたとき、想定外の時間がかかりやきもきするということはありますね。

長年経験していればトラブルは減りますが、必要書類についての食い違いや誤解がないよう、事務兼通訳として学生と同じ国の職員をたくさん雇っている場合もあります。通訳専門家以上に国の事情がわかって話を進めることができるので、学校にとってなくてはならない存在です。

面接指導

これは実践的に行われます。想定問答を考え与え、学生に作文を書かせるのですが、本人の伝えたい意図が言葉に十分に表されていない場合や、かえって誤解を招く言い方をしている場合もあり、文そのものを一から添削することもあります。

面接の受け方への指導もあります。挨拶、座り方、おじぎのしかたなどマナーに関することがほとんどです。この指導は学生側も必要だと感じる指導なので、双方の気持ちが合ったやりがいのある指導ともいえます。

イベントの開催や紹介

指導とは少し離れますが、学生の選択肢の増加、動機の向上のために様々なイベントを開催したり、紹介したりということも進路指導担当の仕事のひとつになっています。最近では、大学や専門学校も留学生の獲得に熱心で、学校説明のために日本語学校を訪れることも珍しいことではなくなりました。

地方の専門学校であれば学校見学バスツアーも行っています。このあたりは日本人の学生も同じですね。進路指導の先生が引率し連れていきます。ただ日本人のおもてなし精神もあるのでしょうか、学生に対しお客様扱いといった学校も見られ「お金さえ払えば合格できる」とまことしやかに囁かれる場合もあります。

まとめ

「学生の年齢が十分に大人の場合がある」、「ビザ問題があるので進路選択も複雑になる」、「書類の書き方指導や必要書類についての丁寧すぎるほどの実際的指導が必要」など、外国人学生だからこその指導の難しさがあります。学生からすると、希望通りの進路が決まらず不法滞在になることだけは避けたいことで、そういった意味合いもあり、いい加減にはできない責任重大な仕事です。

このような理由から、授業クラスを抱えながらの進路指導となると、なかなか厳しいというのが現実かもしれません。

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